尾田先生はエネルギーの塊(林)
――今の漫画って映像化がセットというか、連載を始める時点でそこまで見据えているんですか?
林 考えている人は考えているんじゃないですかね。僕はそこがゴールになってしまうと何かブレそうな気もするので、作家さんには基礎知識としてだけお渡しするようにしています。今アニメになっている作品とか、この数年でアニメになった作品はどんなもので、その中でどういう結果が出たか、みたいな感じで。
結局、漫画として面白ければどうにでもなるよねという話なんですけど、アニメ化がゴールだと思っている作家さんはもちろんいるので、その場合はどうすればアニメにしやすいかをちゃんと話すようにしています。でも、これは僕の感触ですけど、絶対アニメ化したいという人は半分以下くらいですかね。
佐久間 そんな感じですか。
林 ですね。アニメになったらありがたいですねぐらいの感覚で、面白い漫画を描きたいというほうが多いですね。アニメ化されるとやることが増えますし。本当に死にそうになりますから。
佐久間 そう考えると、尾田(栄一郎)先生ってすごいですね。
林 とんでもない作家さんですよ、本当に。創作エネルギーの塊だと思います。
佐久間 すごいですよね。映画にも自分でコミットしていくという。
林 驚きですよね。あんな先生は二度と出ないんじゃないかな。エネルギーの総量に圧倒されます。だいたい週刊連載って1年やったらみんな死にそうになるので。それをあれだけ長きにわたって続けて、もうすでに十分なキャリアがあるのに、さらにあそこまで映画に関わって良いものにしていこうとする作家さんって本当に素晴らしいと思います。
――マンガのアニメ化の流れは加速していると思うんですけど、どういう理由があるのですか?
佐久間 やっぱりアニメがシーズン制になったのが大きいんじゃないかなと思います。要は1期だけアニメにすることが普通にできるようになったというか。
僕らが子供の頃は最低2クールやるとか、打ち切られるまではやるみたいな感じがあったけど、シーズン1、シーズン2という区切り方をするようになって、しかも僕らも普通にそれを待てるようになったから、アニメとマンガのフェーズって変わったんじゃないかと思いますね。クオリティも上がったし。
林 そうですね。アニメオリジナルの展開をやらない作品も増えましたね。
佐久間 そうそう。やっぱりアニメオリジナルの展開で離れるとかってありました。
林 アニメオリジナルはまた違った大変さがあります。巻数浅めでアニメが決まって、6巻前後で2クールつくるぞ、半分オリジナルになりますよというときの脚本の打ち合わせはもう大変で、大変で……。
佐久間 それが少なくなったので、マンガとアニメの幸福な関係が加速したんだと思います。
――アニメ化と異なり、マンガが実写ドラマ化されるケースも多いですよね。「マンガ→アニメ化」と、「マンガ→実写ドラマ化」とでは、どういう違いがあるんですか?
佐久間 実写化の場合は実写化の企画が持ち込まれてくるんですよね。
林 そうです。アニメ版権、実写版権、あと舞台版権があるので、それをバラバラで売るんです。アニメが好評だから実写をつくりたいですという感じでお話をいただくことが多いですね。
佐久間 けっこうあるのは、いい漫画だと思ってドラマの権利を押さえに行こうとすると、アニメが先にやってからしかやりたくないとか言われることはあります。
林 たぶん編集者サイドとしては、アニメ化を待ってほしいと言っちゃいますね。不思議なんですけど、実写化よりアニメ化のほうがコミックスの数字が動くんですよ。なので、先にアニメをやってから実写でお願いしますとお戻しすることが多いですね。