バブル景気、平成不況…
なおも社会を牽引する団塊の世代
1973年のオイルショックをきっかけに高度経済成長は終焉を迎え、バブル景気に向けた安定成長期に入る。若者時代を終え、徐々に社会の中核を担い始めた団塊の世代だが、中年にかけても社会や消費の中心であることに変わりはなかった。
「その後も団塊の世代が作り上げた文化は数え切れません。例えば、現在のグルメ文化は1980年前後のラーメンブームに端を発していますが、その中心を担ったのは当時30代だった団塊の世代でした。
また、1979年に日本で初めて発売された本格的乗用ワゴン車も、団塊の世代が形成した『ニューファミリー』がメインターゲット。乗用ワゴン車の普及は、山や川へのキャンプを流行させ、現在のキャンプブームに続いています。
さらに1970年代に深刻化した公害問題は、専業主婦になった団塊の世代の女性たちの環境意識を高め、詰め替え洗剤の発売や『無印良品』の登場へと繋がりました。SDGsなどに見られる環境問題への関心は、団塊の世代が原点だといえるでしょう」
現在、日本中を席巻するK-POPブームも、団塊の世代が重要な役割を担ったと阪本氏は言う。
韓国カルチャーの流行に火をつけたのは、2002年に放送が開始された韓国ドラマ「冬のソナタ」がきっかけだが、このとき主演俳優のペ・ヨンジュンに熱狂し、「ヨン様ブーム」を牽引したのは、当時50代後半の団塊の世代の女性だった。
団塊の世代は、先行世代に比べて子供の自主性を重んじる傾向が強いため、母子間の関係が良好で、親子で同じ趣味を共有する「友達親子」も多い。この関係性が娘世代への韓国カルチャーの浸透を後押しし、K-POPブームの土台を築いた。
戦後の日本社会を振り返ると、その動きには何かしらの形で団塊の世代が関わっている。高度経済成長からバブル景気、平成不況に至るまで、彼らの加齢とともに日本社会の風景も変わってきた。70代になった今もなお「俺たちが社会の主役」という自意識を持ち続けるのも、理解できなくはない。
「音楽プレイヤーのiPodが流行した2000年代の半ば、ある講演後の質疑応答で手を挙げた団塊男性の話が今でも記憶に残っています。
『最近、若者の間でiPodが流行、という記事を読んだが、"俺だってiPodを使っているんだ。なぜ、団塊世代のことが書いてないんだ!"』と怒っていました。
記事に自分たちの世代のことが書いていないからといって文句を言うのは団塊の世代ぐらいです。だから、団塊の世代に動いてもらおうと思ったら、とにかく持ち上げる。特にマスメディアを通じて『あなたたちが主役ですよ』というメッセージを発信すると、彼らは驚くほど前向きに消費行動を起こしてくれます」
「失われた30年」に青年期や少年期を送ってきた現役世代には、想像しがたいメンタリティかもしれない。しかし、それが団塊の「2025年問題」を考えるうえで、押さえておくべき彼らの特性なのだろう。
取材・文/島袋龍太
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