「噺を教わるという事は人間性をいただく事なんです」
末永 まさに私も今日それを伺いたかったんです。あるインタビューで方正さんが仰っていた「噺を教わるというのは間をいただく事だ」という言葉が、すごく気になっていて。
方正 ある人から噺を教わるのは、その人の「人間性をいただく」という事なんですよ。そんなの普通はできないじゃないですか。でも芸やったら、いただけるんです。
で、その人間性とは「間」なんです。この人はここを面白いと思うからこれだけ間をとるんだ。ここは何も思わないからササっと済ませて行っちゃうんだって、間のとり方で全部わかるんですよ。
末永 なるほど! 芸を模倣する事でその人の思考を追体験して、人間性を知るんですね。とすると、一人の師匠だけでなく色んな方から芸を教わるという事は、色んな人間を知った集合体として、自分の芸が出来上がっていく事になりますよね?
方正 そうですそうです。
末永 とんでもない世界ですね。
方正 すごい世界ですよ。だって普通くれないでしょう、自分の芸を。何百時間もかけて磨いてきた財産ですよ。それを教えてくださいって来られたら、皆さん「おう、やれやれ」ってタダでくれるんです。お願いして僕、断られた事ないですもん。
だから貰った人はちゃんと感謝して、次は自分が下に与えていかないといけません。師匠から頂いた人間性に、自分の人間性も乗っけたものを、今度は僕が下に教えて、下はその下に…ってつなげていくんです。
――そこに惜しがる気持ちなどはないんですね。
方正 いや、正直ちょっとはありますよ(笑)。稽古つけてもらっていいですかと言われたら、僕がこんだけ苦労して作ったモンをあげないかんのか…って少しは思います。だけど、やっぱりうれしいんですね。だってそれは「あなたの人間性が好きです、人間をください」って言われているのと一緒やから。
末永 …すごい名言をいただきました。
馬上 ぜひ『あかね噺』で使いたいから、今の話は誌面に載せないでおいてほしいですね(笑)。
――最後に『あかね噺』ファンの皆さんへ一言ずつお願いします。
末永 たくさんの声援をいただけているのは、この作品の面白さを信頼していただけている事だと思っています。その信頼を裏切らないよう今後も頑張りますので、ご期待ください。
馬上 『あかね噺』から落語に興味を持つのも、落語を聞いて『あかね噺』をより深く楽しんでもらうのも、どっちもアリな作品です。ぜひ両方楽しんでもらえたらうれしいです。
方正 僕自身も読んで面白かったし、『あかね噺』が若い人達に、落語の裾野を広げてくれるのは本当にありがたいですね。漫画で興味を持ったら、ぜひ寄席にも来てほしいです。落語という本当に面白くて素晴らしい世界が、そこにありますから。
取材・文・写真/週刊少年ジャンプ編集部
3話まで無料で公開中
漫画の続きは下のボタンから!
週刊少年ジャンプWEBはこちらから
https://www.shonenjump.com/j/