大麻グミを食べた若者が告白「コーラ味を食べたら最初は効かず、追加して2時間後に吐き気や動悸が…」専門家は「危険ドラッグと同じ流れ」と警鐘。製造元は「炎上はチャンス」と呆れた反応だったが…
11月17日、厚生労働省麻薬取締部などが「大麻グミ」を製造した大阪市の会社や、都内で販売する店舗2ヵ所に立ち入り検査を行ったことを明らかにした。少なくとも東京都内で11人、大阪府内で十数人がこのグミを食べた後に体調不良を訴えて緊急搬送されている。くわえて健康上のトラブルを訴え出る事例は日ごとに増加しており、波紋は広がるばかりだ。
「悪夢を見て、水をいくら飲んでものどは乾いたまま…」
ある20代の男女2人は11月15日の夜、東京都板橋区のマンションで大麻グミを食べた直後、手足のしびれや吐き気などに襲われ病院に搬送された。また、都内では#1で報じた「はらっぱ祭り」や押上駅でグミを食べた人たちが体調不良を訴えるなどの事例が相次いでいる。
取材を重ねると、大麻グミが若者の間で少しずつ身近になりつつある実態が浮き彫りになってきた。実際に大麻グミを食べたことがあるという20代男性は語る。
「最近、歌舞伎町や道玄坂のクラブイベントなどでも大麻グミを売っている人がいましたよ。大麻と違ってグミなら持っててもパクられることはないですし、物は試しにと気軽に食べちゃう人も多いと思います。実際に僕も食べました」

大麻グミ(販売店通販サイトより)
男性は好奇心から3ヶ月前にネット通販で購入し、大麻由来成分に似た物質「HHCH」が含まれた大麻グミを食べたという。
「1袋(10コ入り)で7000円でした。僕はコーラ味を食べましたが、食べたあとに特に効果がなかったので食べる量が少なかったのかな、と1粒ずつ追加していきました。すると、2時間後に一気に体が沈み込む感覚になり、その直後、吐き気や動悸が止まらなくなりました。目を閉じても悪夢のような幻想にうなされて、水を飲んでも飲んでも、のどは乾いたまま。
これはヤバいと思って友達を家に呼んで介抱してもらいましたが、一日中吐き気は止まりませんし、気だるさはその翌日も残っていました。大麻グミは最近よく見かけるようになって身近な物に思ってましたが、今は危険なものとしか思えません」(同)
大麻グミ誕生の背景に大麻取締法改正案?
こうした状況に、元厚労省麻薬取締部捜査第一課長の高濱良次氏は警鐘を鳴らす。
「大麻グミに使われている『HHCH』は大麻由来成分の『THC』に似せた合成化合物です。『THC』はカンナビノイドの一種で、摂取すると高揚感や多幸感を得られたり、リラックス効果を得られるといわれている。他にも幻覚作用や記憶障害などの効用もある。
『HHCH』は大麻と同様の効用を得られるうえに、所持していても違法ではないが、合法かと聞かれれば私個人としては疑問を感じる。実際に『HHCH』を摂取して身体的に不調を訴えている人がいるわけで、身体への副作用に関しては未知数なので警戒が必要です」

大麻グミをはじめ『HHCH』を使用した商品が普及しはじめた背景には、11月14日に衆議院を通過した大麻取締法改正案が大きく関係しているという。
「今後、改正案が施行されれば、大麻由来成分の『THC』は所持だけでなく使用も麻薬取締法の対象となり、他の規制薬物と同様に使用罪が適用できるようになる。
一方、改正案が施行されても『HHCH』は違法とはならないため、“逮捕を避けられる、化学的に作られた規制対象外のカンナビノイド”をうたい文句に売り出していた」(高濱氏)
販売会社は反省の色なしだったが
これは、一時期流行っていた危険ドラッグの流布と同じ流れだという。危険ドラッグは指定薬物の化学構造式の一部を変え、麻薬や覚せい剤と同様のドラッグでありながら、法の網をかいくぐっていた。
「指定薬物と基本の骨格が同じであれば即禁止となり、危険ドラッグは減っていった。ところが『HHCH』は骨格は同じではなく、似せて作られた合成化合物。8月に『THCH』という、『THC』に似た骨格の合成化合物が規制されていることから考えると、仮に『HHCH』が規制されてもまた新たな合成化合物が出てくる可能性がある。今後は骨格が似ているものをどのように取り締まるかが課題といえる」(高濱氏)
これだけの社会問題になると、規制化に向けた流れにはなっていくだろうが、そうすぐにとはいかなそうだ。
「実際の健康被害がどの程度なのかについて、データを揃えないと規制化はできない。薬というのは人によって生活環境や体質で効いたり効かなかったりするし、薬を使っている頻度、背景、さまざな条件でのデータをとらないといけないので、相応の時間はかかるでしょう」(高濱氏)

問題となった大麻グミを製造・販売した会社「WWE」について実話誌ライターは言う。
「故意でなかったにせよ、このグミで体調不良者が出ているにもかかわらず、会社の代表を務める男性はX(旧Twitter)で、『どうも、話題の大麻グミの人です』『話題のグミはこちら』とのカキコミとともに自社の通販サイトのURLを貼るなど、反省している様子が見られないどころか、むしろこの炎上を『商売のチャンス』と見ているフシすらあった。
彼は11月17日、メディアの合同取材に応じていましたが、『我々は違法なものは売っていない。継続して製造・販売していく』と話しており、今後もHHCHグミによる事故は続いていくのではないでしょうか」
規制や法整備が整うまで、しばらくいたちごっこは続きそうだ。
※「集英社オンライン」では、今回の事件について情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(Twitter)まで情報をお寄せ下さい。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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