「幸せ一杯かき氷の巻」(ジャンプ・コミックス61巻収録)

今回は、駄菓子屋で古い業務用かき氷機を手に入れた両さんが、氷三昧の食生活を送るお話をお届けする。

昭和30年代くらいまでの駄菓子屋には、かき氷機を備えた店が多かった。清涼飲料の自販機やコンビニどころか、家庭用クーラーや下手をすると冷蔵庫すら普及していなかった時代に、駄菓子屋のラムネやアイスキャンディ-、かき氷は、手軽に涼を取るための貴重な手段だったのだ。

そして製氷業は、現在以上に重要な産業だった。その理由は、電気による冷蔵庫が現在ほど普及していなかったため。生鮮食料の腐敗や病原菌の繁殖を防いでそれらを保存、流通させるには、氷が不可欠だった。

また、明治時代~昭和30年代にかけて普及していった氷冷蔵庫による需要が大きかったためもある。昭和30年代以降、電気洗濯機、電気冷蔵庫、白黒テレビといった家電製品が「三種の神器」と呼ばれ、庶民の憧れのアイテムとして普及するが、それ以前は、家庭での冷蔵設備と言えばこれだった。

氷屋に注文して四角く切り出した氷を配達してもらったり、リヤカーで流す氷売り(本作で描かれているが、実際に見たことのある人ははたしているだろうか?)から氷を買ったりして、それを冷蔵庫の中に入れて使用したのだ。

ちなみに『こち亀』作者の秋本治が子供のころ……昭和30年代には、ご自宅に冷蔵庫がなかったという。生鮮食品は基本的に買った当日に使い切ってしまうし、 翌日に残った刺身などはヅケ(漬け)にして食べたとのこと。そんな時代の「氷」は、ちょっと特別なアイテムだったのかもしれない。

それでは次のページから、両さんのかき氷三昧な日々をお楽しみください!!