「決着」にはふたつの意味があった
判決後の会見で千奈ちゃんの父親は「まず初めに実刑という言葉を聞いた時にホッとしたし、よかった。納得は出来る判決にはなった。ですけれど、叶うことなら両名、少し遡るなら書類送検された4人全員が実刑判決だったらと思うことはある」と語った。
昨年の9月20日、千奈ちゃんの父親が集英社オンラインのインタビューに涙ながらに語っていた『決着』にはふたつの意味があった。
ひとつは刑事裁判での判決だが、もうひとつは元園長が遺族の前でノートに記した川崎幼稚園を「廃園にする」という約束についてだ。しかし、「入園希望者がいる限り園を継続する」と園側は現在も廃園しておらず、父親は今後も廃園を求めていく考えを示している。あらためて当時の父親のインタビューをふり返る。
2022年9月5日、河本さんはベッドで眠る千奈ちゃんの寝顔を見て「行ってくるね」と声をかけ、朝7時30分ごろ出勤した。千奈ちゃんはふだんから寝相が悪く、この日も枕のほうに足を向けて逆さまに寝ていて、その微笑ましい様子が印象に残っているという。
「これが僕が千奈と接した最後でした。その後、8時ごろ妻が起きて朝食を食べさせています。その後、歯を磨かせ、顔を洗わせ、髪を三つ編みに結ってあげて幼稚園の送迎バスに送り出しています。
幼稚園が大好きだった千奈は送迎バスが到着すると、妻が持っていた幼稚園のバッグを自分から持ち、送迎バスに乗り込みました」
このあと、園に到着した送迎バスの降車確認などを元園長の増田被告が怠り、千奈ちゃんは高温の車内に約5時間にわたって置き去りにされ、搬送された病院で死亡した。
「救急車などに乗せる際に使うようなキャリーベッドって言うんですかね。そこに千奈は裸で寝かされていて、いたるところに管とかが繋がれていました。
前髪は汗で額にべったりくっついている状態で、朝に妻が結った三つ編みも濡れていました。目も焦点が定まってないように半分開いていて、口の周りには血の泡が固まったような状態でした。
僕も妻も取り乱して『千奈ちゃん、千奈ちゃん』と声をかけ続けていました」