彼の映画を見て育ったと言ってもいいくらい、私の学生時代を代表する本物のスーパースター! “アメリカの良心”を具象化していた男優です。
私は特に彼の声が好きでした(吹き替えなんて許せない!)。終始善人役で、悪役を演じたことはまずないと思います。
マレーネ・ディートリッヒと共演した『モロッコ』(1930)で世界的スターになった人だけど、さすがに私はまだ生まれていないので、そのデビューの衝撃は知りません(笑)。
夢中になって見始めたのは『誰が為に鐘は鳴る』(1943)『摩天楼』(1949)それから『真昼の決闘』(1952)。続いてオードリー・ヘプバーンと共演した『昼下がりの情事』(1957)。私のご贔屓となったアンソニー・パーキンスと共演の『友情ある説得』(1956)も大好きな作品でした。
戦争映画からロマコメ、ホームドラマまで幅広い役を演じたスターですが、ゲイリー・クーパーといえばやっぱり西部劇。中でもグレース・ケリーと共演した『真昼の決闘』は名作です。
町を代表してたったひとりで悪と戦う一匹狼を演じていて、主題歌も大ヒットしました。西部劇といえばジョン・ウェインも一方の雄ですが、クーパーの方が知的でエレガント。西部劇というジャンルを確立した立役者です。

戸田奈津子が「吹き替えなんて許せない!」と言い切る真のスーパースター、ゲイリー・クーパー。西部劇というジャンルを確立させた立役者
字幕翻訳の第一人者・戸田奈津子さんは、学生時代から熱心に劇場通いをしてきた生粋の映画好き。彼女が愛してきたスターや監督の見るべき1本を、長場雄さんの作品付きで紹介する。
長場雄が描く戸田奈津子が愛した映画人 vol.20 ゲイリー・クーパー
吹き替えなんて許せない
『真昼の決闘』(1952) High Noon 上映時間:1時間25分/アメリカ
西部の小さな町ハドリーヴィルの連邦保安官ウィル・ケイン(ゲイリー・クーパー)はエミイ(グレース・ケリー)と結婚式を挙げ、退官して街を出ていくことが決まっていた。ところがその日、ケインが以前逮捕したフランク・ミラーが釈放され、正午の列車でハドリーヴィルに到着する知らせが舞い込む。ミラーは仲間3人とともに、ケインに復讐するつもりだった。ケインは仲間集めに奔走するものの、怖気づいて誰も協力者が集まらず、たったひとりでフランク・ミラーに立ち向かうことになる。
ゲイリー・クーパー
1901年5月7日生まれ、アメリカ・モンタナ州ヘレナ出身。1924年頃から西部劇のエキストラ出演を始め、1926年に『夢想の楽園』で本格的に映画デビュー。1929年に『バージニアン』で西部劇スターとしての地位を確立し、『モロッコ』(1930)で世界的スターに。1941年に『ヨーク軍曹』でアカデミー主演男優賞を受賞。1952年に『真昼の決闘』で2度目の受賞をした。主な出演作は『オペラハット』(1936)『打撃王』(1942)『誰が為に鐘は鳴る』(1943)『摩天楼』(1949)『友情ある説得』(1956)『昼下がりの情事』(1957)など。1961年逝去。
語り/戸田奈津子 アートワーク/長場雄 文/松山梢
戸田奈津子が愛した映画人


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