♯1
♯2
♯3

「ここまでしてくれる人たちはいない」

「ありがとう、ありがとう」
「靴もあるのよ?」
「俺は、靴が欲しい」
「何センチ?」
「27センチだけど」
「28センチしかないけど」
「入ればなんでもいいよ、ありがとう」

ぼくは、初めてそこで移民の人たちを間近に見た。彼らは怯え、怖がっていた。そして、そんななかで助けに来てくれている彼女たちに、感謝を越えたなにかを感じているように見えた。

「ここまでしてくれる人はいないよ」
ポツリと1人の移民が言った。ぼくは夜の街灯の下、移民たちと交流する彼女たちの姿を見ていた。

「あなたの、夢はなんですか?」日本では定番のこの質問が、時としてラテンアメリカの人々に通じない理由_1
撮影/嘉山正太
すべての画像を見る

翌日、パトロナスの家に行くと、何人かの移民の人たちがいた。パトロナスの家には移民の人たちが休める宿泊設備があった。簡易的なベッドなのだけれど、中米からの長い旅を経てきた移民の人たちにとっては、きっとありがたい環境だろう。

「でも、タダってわけじゃないよ。ここに来たら、できる範囲で働いてもらうんだ」とノルマさんは言っていた。

たしかに、移民の人たちも、ここで食料の袋詰めの作業を手伝っていた。移民の人たちが、同じ移民の人たちを助ける。それは一体、どんな気持ちなんだろう。

ノルマさんはその日、日中は出かけてしまっていた。パトロナスの家は、豪快な彼女がいないと、のんびりした農村の風が吹き抜けて、とても静かな場所になる。あ、そうだ、と思い出して、ぼくは自分の車に向かった。着なくなった古い服を寄付しようと持ってきていたのだった。フリアさんに手渡すと、彼女ははにかんで恥ずかしそうに俯いて喜んでいた。