校舎3階は主に標本展示エリア、
そして非常階段を降りるとそこは……
階段の踊り場には、ウミガメの剥製がたくさん掲げられていた。
その先の3階は、主に標本展示のエリアとなっている。
理科準備室には見事なクジラの骨格標本が置かれていた。
棚の中にはイルカやクジラ、サメなどの骨。
中世ヨーロッパ貴族の趣味の部屋、ヴンダーカンマー(驚異の部屋)というのはきっとこんな感じだったんだろうなと思う。
隣の理科室に入ると、種々の魚類の標本瓶が机の上に並べられている。
そして机の水道のボウルの中にも、メダカやドジョウなど小さな魚が泳いでいた。
芸が細かい。
校舎の端から非常階段を使って外に出ると、そこには「屋外大水槽」という名の25mプールがあり、大きなウミガメやサメ、その他の大型魚が悠々と泳いでいた。
こいつらも、まさか自分が小学校のプールで暮らしているとは思っていないだろうな。
これで水族館の展示を一通り見終わったが、自分のペースでスイスイ進めたため、下校(閉館)時間まで10分ほどの余裕があった。
そこで順路を逆行し、もう一度見てみたい水槽に戻ったりしてみる。
僕一人だけだから、そんなことも自由自在なのだ。
来るときには見落としていた仕込みをいくつか発見した。
例えば、廊下に置いてある飛び箱の裏側が、アカハライモリの水槽になっていたり、掲示板に貼られている習字(実際に地元の小学生が書いている)が、すべて魚や海関係のものになっていたり。
スタッフが手作りで、楽しみながら作り上げた施設なのだろう。
ほっこりした気分にさせられる、本当にいい水族館だ。
素晴らしい水族館を独り占めできたことに感謝
受付に戻ってきたが、スタッフのお姉さんも暇そうにしていたので少し話をした。
この学校が閉校になったのは2001年で、本当の廃墟だった10年余りを経て水族館にリノベーションされたことや、同じ高知県にある桂浜水族館とコラボして土産物を作ったりしていることなどを聞いた。
ちなみに、失礼とは思いながら「客が全然いない」と繰り返し書いているが、このむろと廃校水族館は決して不人気の水族館ではなく、開業以来、地元を中心とする様々なメディアで取り上げられ、いつもはたくさんの入場者で賑わっているようだ。
小学校に対するノスタルジーや、綺麗で見やすい水槽、それに、他の水族館ではあまりフィーチャーされない身近な海の生き物をしっかり扱っていることが、評価されているポイントなのだという。
そう。
シーズンオフである真冬の平日、それも閉館間際にひょっこり訪れる僕の方がちょっとおかしいのだ。
でもそのおかげで、こんな素晴らしい空間を独り占めできたのだから、ラッキーだったと言うべきだろう。
とてもいい体験だった。
写真・文/佐藤誠二朗