2015年に実店舗での営業を終了した文化屋雑貨店の看板を掲げる店が!

その店のことは、以前から認識していた。
日本一の“本の街”、東京・神保町の一角に存在する、濃厚昭和テイストな看板建築の小さなお店、元 鶴谷洋服店である。

惜しまれつつ幕を下ろしたあの伝説の雑貨店が、本の街でこっそり営業していた!_a
神保町のメインストリートから少し奥に入ったところにある元 鶴谷洋服店

店名に反し、ここは洋服の店ではない。
少しの古着を扱ってはいるもののあくまでサブ的な扱いで、中心商品は神保町らしく古本、そして雑貨。
ではなぜ“洋服店”、そして“元”なのか?

ホームページなどの情報によると、ここはもともと三代続いたオーダーメイドの紳士服テーラーだった。
2010年ごろまで営業していたのだが、経営者が他界したために閉業。
しかしその後、親戚である現オーナーが借り受け、店名も建築物もあえてそのまま残し、雑貨・古本・古着を取り扱うお店として再オープンしたのだとか。

だから“元”なのだ。
建物は昭和3年築というから、筋金入りの昭和レトロ建築である。

太平洋戦争末期、東京の山の手地域は米軍の空襲で焼け野原にされたが、神保町界隈は焼夷弾攻撃を受けなかった。
当時から、学校や古書店が多く存在する街であり、世界でも有数の文化的資料が集積する地域として知られていたため、爆撃対象から除外されたという。
そのため一帯には随所に、昭和初期に建てられた古い建造物が残っていて、元 鶴谷洋服店の建物もそのひとつなのだ。

で、僕がこの元洋品店が気になってならないのは、店舗内に「文化屋雑貨店」の看板が掲げられ、そのオリジナル商品が販売されているからだ。

惜しまれつつ幕を下ろしたあの伝説の雑貨店が、本の街でこっそり営業していた!_b
文化屋雑貨店の看板がひそかに掲げられる店内

1974年に渋谷のファイヤー通りで開業し、1988年からは原宿のキャットストリートに移転して営業していた文化屋雑貨店の名を聞いても懐かしいと思わないならば、その人は我ら中年サブカル派のモグリだ(なんのこっちゃ)。

キッチュな雑貨店の嚆矢であるこの名店は、2015年に惜しまれつつも実店舗を閉じた。
その後は通販での販売を続けていると聞いていたが、実はこの元 鶴谷洋服店の一角を借り、店頭販売も細々と続けていたのである。
ちなみに実店舗ではもう一店、鹿児島デシリットルというお店にもオリジナル商品を送り込んでいるのだとか。