次々と繰り出されるユニークな展示に
気分はどんどん盛り上がる
なんともホラー感のある“廃校”という言葉。
僕はもはや、心霊的なものなどまったく怖いともなんとも思わない、53歳の仕上がったおっさんだが、もしも誰もいない廃校を夜中に一人で探索しろなどと言われたら、やっぱり気分がいいものではないだろう。
でもここは元・廃校とはいえ、現在は立派な水族館。
夕暮れどきながらまだ明るかったし、まったく怖いとは思わなかったが、水族館側も廃校のイメージを大切にしているのか、要所要所に人体模型や骨格標本を置いておくなど、お化け屋敷的な仕掛けをしていた。
校舎内の2階と3階が屋内水槽エリア。
長い廊下を歩き、教室をひとつずつ巡っていく順路になっているようだ。
廊下に設置されている手洗い場が、そのままタッチプール(海の生き物を触れる水槽)になっていたりして、のっけからなかなかユニークだ。
黒板にチョークで書かれている、案内表示もいい感じ。
教室によっては学校の机と椅子、それにOHP(懐かし!)などの懐かし学校備品が置いてあったりして、学校にいる気分が盛り上がる。
最初の教室に設置されていたのは、ウミガメの水槽だった。
中央の円形大型水槽や、周囲の小型水槽の中で、成長過程の可愛らしい子ウミガメが泳いでいた。
そうそう、この水族館を運営管理しているのは、NPO法人「日本ウミガメ協議会」という組織で、ウミガメはここの顔となっているようだ。
教室内や廊下には、美しく手入れされた水槽が並べられ、種々の魚類が展示されている。
ゴンズイ、ミノカサゴ、ウツボ、クエなどがいたが、どれも日本近海に生息する魚だ。
水族館全体で展示されているのは約50種、1000匹以上にのぼる海の生き物で、大半が地元漁師の定置網にかかったもの、あるいは職員が近くの海でみずから釣ってきたものらしい。
地元密着型の施設なのだ。
ボラの群れの水槽は圧巻だった。
ガチャガチャでエサが売られていたので、迷わず買って与えてみると、無数のボラがワワワッと集まってきて面白い。
声には出さねど心の中ではキャッキャと歓声をあげ、多分、自然と顔もほころんでいただろう。
だが重ねて言うが、この大きな校舎の中に今、客は僕一人しかいないのだ。