「早く」「多く」指名され続けるNHK

次に、より定量的に指名順序の違和感を明らかにするため、指名順序の平均値を算出した。

【総理大臣会見】なぜNHKの記者ばかりが指名されるのか? 指名回数のデータ化で見えた「不公平」と「メディア間格差」_5
幹事社としての指名(1〜2番目)は集計から除外しているため、3番目が最も早い指名となる
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ここでも、やはり一部の社だけが早く指名されやすい傾向にあることが明確になった。特に早く指名されているのはNHK(4.52番目)と日本テレビ(4.85番目)の2社。NHKは指名回数でも21回でトップだったため、「早く」「多く」指名されていることが明白で常勤幹事社19社の中で特に優遇されていると言える。

他社の数値はおおむね6〜9番におさまっているが、地方メディアの指名は遅いという傾向も見えてくる(京都新聞10.2番目、西日本新聞9.66番目、北海道新聞9.14番目)。

このように、指名が極めて恣意的に行われていることは定量的に見ても明らかといえるのではないだろうか。最後にこの背景にある重要な事実(公然の秘密)を共有しておく。

内閣記者会常勤幹事社19社は、原則として質問を官邸報道室に事前提出している。元総理番記者にインタビューする機会に恵まれた筆者が詳細を確認したところ、内閣記者会は幹事社を中心に質問を取りまとめて事前提出するだけではなく、様々な根回し(似たような質問が出た場合は重複しないように事前調整する、質問内容について官邸からアドバイスを受けることがある、等)まで行っていることが明らかになった。

そうした根回しを経て、内閣広報官は各社の質問を事前に正確に把握しているのだから、より対応しやすい質問をする社を多く指名するのも当然である。

*質問事前提出の詳細は、元総理番記者本人に筆者がインタビューし、theletter「犬飼淳のニュースレター」で公開した「【独自】元 総理番が明かす、首相会見の質問事前提出「業務」のウラ側」 (2023年1月3日)  参照

このような悪習によって、内閣記者会は権力監視という本来の役割を放棄しており、官邸報道室は無難に会見を運営。両者だけはWin-Winの関係を築く一方で、国民の知る権利は侵害され続けているのである。

文/犬飼淳 写真/小川裕夫