賞レースのためにネタは作らない

——それを聞くと、もう一度、見返したくなりますね。今回の『SとM』もそうでしたけど、かが屋のネタを観ていると、もっとたっぷり時間をかけてみたら、もっと味わい深いんだろうなと思ってしまうんですよね。

加賀 そういう方には是非、単独ライブに来て欲しいですね。『SとM』も、もともとは10分以上あるんです。

賀屋 最初にやったときはね。

加賀 毎年、60本ぐらいネタをつくるんですけど、基本的には、どのネタも最初はそれぐらいの長さなんです。キングオブコントのために最初から5分のものをつくるということはないので。

初出場時は“どぶろっくショック”。表情ひとつにこだわる職人・かが屋がキングオブコント用にネタを作らない理由_3
かが屋のネタの多くを作る加賀。幼馴染に誘われNSCの大阪校に35期生として入学したが、若手芸人は漫才しかできなくなると勘違いし、コントをやるために上京した

——それを5分に削るというのは難しくないのですか。

加賀 2017年までは準決・決勝は持ち時間が4分だったんですよ。4分だと、もう大手術が必要になってくる。どこかをごっそり引っこ抜くとか。でも5分なら、まだ何とかなりますね。キュッと縮めれば。

賀屋 めっちゃ早口でしゃべるとか。

——4分と5分で、そんなに違うんですね。

加賀 ぜんぜん違いますね。『SとM』も4分にしたことがあるのですが、かなり厳しかった。4分ルールの時代だったら、キングオブコントでやってないですね。勝てる気がしないので。5分あれば、何とかあのネタのよさを残せる。

——決勝時は、準決勝のときにはなかったトイレの扉のセットがありました。居酒屋で、Mっ気の強い男にほれた女性が、あえてS全開でその男に迫っていくネタでしたが、コント中、2人は何度かトイレへ行って、共通の知人に電話をかけるシーンがあったんですよね。

加賀 劇場だとお客さんが僕らの動きを見逃すことは、ほとんどないんです。だから、動きで想像がつく。ここに扉があるんだな、と。でもテレビだと、料理をしながら見ているかもしれないし、スマホをいじりながら見ているかもしれない。

なので、トイレの扉を開けるシーンを見逃してしまったら、ただ、カウンター席の隣の空間で電話をしているようにしか見えない。あんな近くで電話しているのに、どうして横でお酒を飲んでいる人には聞こえないの?ってことになりかねない。