「そのネタ、アメリカでは聞き飽きとんねん!」
――村本さんの著書の中に「当たり前を疑えない人が増えている」とありますが、そう思われる一番の原因は何でしょうか?
それはやっぱり、いつも同じ景色、同じ会話、同じ物、同じ人……。ずっと同じルーティーンを続けているからだと思う。食べ物ひとつにしても、命をいただいているという実感もないでしょ。
『アンパンマン』の作者、やなせたかしさんは貧しい戦時中、目の前に食べ物(アンパンマン)が現れたらいいなーって夢があったそうなんだけど、今はもうコンビニとか、いつでも食べ物が手に入る世界が平気である。
アンパンマンが頭ちぎるときに一発「痛ッ!」とか言ってくれたら、あ、これは命なんだなって気付けると思うんやけど…(笑)
――コメディはそういう気づきを与えるツールでもある?
アメリカの芸人のネタを見ていると、ハッとすることはよくあるよ。
例えばデーオン・コールという人のネタに、「女性のニュースキャスターに白髪が生えたら弱々しく見えるからと若いキャスターに代えられるけれど、男性だと多少白髪があった方が説得力があると言われる。それって不平等じゃない?」というのがあるのよ。
そういうとき、笑ったあとで「確かに……」とハッとしたりして。真面目に考えると難しい議論でも、コメディで面白く伝えられることはあると思う。気づきというものは本来、面白いものなんやけどね。
――私も留学体験がありますけが、アメリカに行くとコメディアンとして、言語の壁とはまた違う壁に当たると思うんです。芸人として外国との文化の違いに苦しむことはありますか?
あるね。
例えばカトリックのネタをしたとき、「そのネタ、アメリカでは聞き飽きとんねん!」って言われたときに、「え……」と思った。
日本だと宗教ネタってタブーに触る感覚があって、キリスト教の大国だともっと希少かと思ったんだけど、むしろやり倒されていた。
やべ……じゃあ俺には何のネタが……って。