「そのネタ、アメリカでは聞き飽きとんねん!」

「テレビで忙しいの漫才のネタまで作って偉い? 逆やん」村本大輔が語るスタンダップコメディと日本のお笑いの決定的な違い_3

――村本さんの著書の中に「当たり前を疑えない人が増えている」とありますが、そう思われる一番の原因は何でしょうか?

それはやっぱり、いつも同じ景色、同じ会話、同じ物、同じ人……。ずっと同じルーティーンを続けているからだと思う。食べ物ひとつにしても、命をいただいているという実感もないでしょ。

『アンパンマン』の作者、やなせたかしさんは貧しい戦時中、目の前に食べ物(アンパンマン)が現れたらいいなーって夢があったそうなんだけど、今はもうコンビニとか、いつでも食べ物が手に入る世界が平気である。

アンパンマンが頭ちぎるときに一発「痛ッ!」とか言ってくれたら、あ、これは命なんだなって気付けると思うんやけど…(笑)

――コメディはそういう気づきを与えるツールでもある?

アメリカの芸人のネタを見ていると、ハッとすることはよくあるよ。

例えばデーオン・コールという人のネタに、「女性のニュースキャスターに白髪が生えたら弱々しく見えるからと若いキャスターに代えられるけれど、男性だと多少白髪があった方が説得力があると言われる。それって不平等じゃない?」というのがあるのよ。

そういうとき、笑ったあとで「確かに……」とハッとしたりして。真面目に考えると難しい議論でも、コメディで面白く伝えられることはあると思う。気づきというものは本来、面白いものなんやけどね。

――私も留学体験がありますけが、アメリカに行くとコメディアンとして、言語の壁とはまた違う壁に当たると思うんです。芸人として外国との文化の違いに苦しむことはありますか? 

あるね。

例えばカトリックのネタをしたとき、「そのネタ、アメリカでは聞き飽きとんねん!」って言われたときに、「え……」と思った。

日本だと宗教ネタってタブーに触る感覚があって、キリスト教の大国だともっと希少かと思ったんだけど、むしろやり倒されていた。

やべ……じゃあ俺には何のネタが……って。