お雑煮には伝統野菜が使われる

餅の形同様に、おすまし汁か味噌仕立ての分岐点もよく議論されます。餅の形ほど、はっきりした分岐点はないのですが、全国的におすまし汁が多くて、福井県、関西地方、香川県など一部の四国地方で白味噌仕立てのお雑煮を食べられています。

白味噌仕立てのお雑煮が海を渡って四国地方に伝わったのは、保元の乱の後、京都から讃岐地方に流された崇徳上皇のもとへ、京都から往来する人々によって伝えられたとされています。
また、九州地方では麦味噌をつかう地域があります。九州では麦が盛んに作られていたという説があり、大分県の一部では麦味噌仕立てのお雑煮が見られます。

お雑煮に入れる具材も各地域バリエーション豊かです。
お雑煮の発祥地である京都では、具材は全て丸くカットされ「家庭円満」「物事を丸くおさめる」という願いがこめられています。

具材のバリエーションは本当にさまざまなのですが、私が特に注目しているのが野菜類です。お雑煮には、ご当地にしかない伝統野菜が欠かせません。
例えば熊本県の「長にんじん」は直径1.5~2.5cm、長さは1mほどある細長い伝統野菜です。「かつお菜」は博多をはじめ、九州地方のお雑煮欠かせない青菜で、かつおのような旨味があり、「勝つ男」と掛けて縁起を担いでいます。

これらの野菜は年中出回ることはなく、お正月の数日前からお店に並びます。
この数日を逃すと手に入らないので、もしお雑煮を食べなくなったり、ご当地色がなくなったりすれば、こういった伝統野菜は見られなくなり、お雑煮は最後の砦だと思っています。
また、最近は人手不足の問題もあり、伝統野菜を作っている農家がどんどん減っていて、このままだと受け継がれなくなっていくんじゃないかと危惧しています。

「丸餅か角餅か」「すまし汁かみそ仕立てか」「野菜はどれ?」…お雑煮に正解ってあるのか、研究家に聞いてみた_3
左:かつお菜 右:長にんじん
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お雑煮文化を守るためには、家族や地域で受け継いでいくことが重要になります。
せひ、ご自身の家のお雑煮の文化や伝統を大切に、今年もお雑煮を楽しんでいただければと思います。

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続きでは、お雑煮研究家・粕谷さんがセレクトするご当地お雑煮を紹介します。

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