「詐欺師が動きやすい社会」に

——コロナ禍の影響で詐欺事件の件数は増えているのでしょうか?

齋藤 法務省発表の「令和3年 犯罪白書」によると、詐欺の認知件数自体は減少しているものの、それでも令和2年の詐欺事件の認知件数は3万468件ですから、日本中で1日に100件近い詐欺事件が認知されていることになります。

しかも犯罪白書の「詐欺」には、詐欺の構成要件を満たしていないものや、詐欺と似通った形の窃盗や横領は含まれていません。くわえて警察に届け出られていない詐欺事件や、被害届が受理されなかったような事件も存在しますので、実際には犯罪白書よりもさらに多くの詐欺事件が発生していると考えられます。

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出典:法務省「令和3年版犯罪白書」

――最近では仮想通貨を用いた詐欺も増えているとききます。

斎藤 詐欺師は時代の移り変わりにあわせてその手口を変えていますが、仮想通貨の登場によって、国際取引のハードルが極めて低くなりました。仮想通貨は従来の銀行を用いた送金よりも早く、匿名で海外に資産を送金できます。これは詐欺師にとって非常に都合のいい仕組みですし、「詐欺師が動きやすい社会になった」ともいえます。

さらに詐欺師にとって追い風になるのが、騙されるターゲットの多くが、仮想通貨に対して正しい知識を有していない点です。「資産運用代行」などといって仮想通貨を送金させる手口が多く見受けられます。

――いまだにコロナ禍にかこつけた詐欺被害なども多いですか?

斎藤 給付金詐欺はその典型ですよね。また国際ロマンス詐欺でも、「コロナで店の経営がうまくいかなくて」というように、コロナ禍を巧みに利用したものが多いです。

コロナ以前であれば、加害者がお金を無心する理由を考える必要がありました。しかしコロナ禍によって、お金を無心する理由が「コロナだから」で済むわけです。

昔から、社会が不安定になるときは詐欺が発生しやすいといわれています。例えば今後はウクライナ国民を騙って仮想通貨の送金を求めるような事件が発生するかもしれません。大変に悪質で許されない犯罪だと思います。

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——国際ロマンス詐欺の被害に遭った場合、どのように対処すればよいでしょうか?

齋藤 まずはお金のやりとりがあったことを示す証拠を集めておきましょう。銀行振込や仮想通貨による送金であれば、その履歴を保存しておきます。「お金を貸して欲しい」「貸したお金を返して」といったチャットやメールのやりとりも必要です。また詐欺師の本名や携帯電話番号など、本人特定に繋がる情報も掴んでおいてほしいですね。

国際ロマンス詐欺は恋愛関係を装っていますので、被害者が「騙された」と気づいた時点ではまだ、詐欺師との繋がりが切れていないケースも少なくありません。したがって相手の情報を聞き出すことも不可能ではないでしょう。

まずは詐欺の被害者弁護に注力している弁護士に相談してみてください。「詐欺で失ったお金は返ってこない」と諦めている方もいらっしゃいますが、加害者に繋がる情報があれば解決できる道筋はあります。


取材・文/平林 亮子