稲田氏は“脱保守”で岸田首相に接近

安倍氏の政治信念の〝継承〟を目論む高市氏に対して、ここ数年、安倍氏や保守派との〝決別〟を指摘されてきたのが稲田氏である。

なかでも稲田氏と保守派の著しい乖離を招いたとみられるのが、2021年の通常国会で、稲田氏が、性的少数者に対する偏見の解消を狙った「LGBT理解増進法案」を提出しようとした一連の過程である。

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このところリベラル色を強める稲田氏だが、永田町での存在感はすっかり薄くなったようで……
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「法案は、与野党の合意のもとで進める議員立法をめざしたのですが、国会上程後の審議日程を十分確保できない見通しであることなどを理由に、自民党内の手続きをクリアできなかった。

その後、当時の下村博文政調会長が記者たちのかこみ取材に応じた際に『安倍さんが反対しているから、法案を通すのは絶対に無理だ』と舞台裏を明かしています」(別の政治部記者)

法案をめぐる安倍氏の圧力はほかにもあった。産経新聞の論説委員が、署名入りのコラムで、法案の国会提出をめざす稲田氏のことを〈(保守からリベラルに)宗旨変えした〉と批判。すると、稲田氏はこのコラムを自身のツイッターでとりあげ、反論したのである。

「この論説委員は、著名な安倍シンパの1人です。後日、稲田氏のツイッターを見たのか、安倍氏から稲田氏に連絡があり、『(論説委員を)敵に回すと怖いぞ』と、自身の信念を貫こうとした稲田氏の対応を暗にとがめたといいます」(同前)

高市氏が存在感を高めた2021年9月の総裁選では、稲田氏も出馬を模索していた。しかし、安倍氏や保守派との間に距離ができていた稲田氏は、20人の推薦人が集まらずに出馬を断念。

総裁選前に、生い立ちや政治信念をまとめた著作を出版して、その著作を手に自ら議員会館の事務所を回ったが、支持は広がらなかったという。