劇団ひとりがエゴサを一切しない理由
──作品を広く届けると、いろんな人の感想がわーっとネットにあがりますよね。ひとりさんはそういった感想をエゴサして見ることはありますか?
僕、見ないです。
──一切?
うん。怖いんですよね、人の感想って。影響を受けやすいんですよ。何か確固たる自信があるわけじゃなくて、不安定だから。自分でちょっとずつ築いたものが、いきなり知らない第三者の言葉でガラッと変わっちゃう可能性もあって、それが怖い。
そこって僕は昔からなんです。自分のファンしか来ないような単独ライブでさえ、アンケートは読まない。スタッフに「これは間違いなく読んで大丈夫」っていうのを2〜3枚ピックアップしてもらってそれを読むくらいです。そのくらい感想を見るのが苦手ですね。
──そうなんですね。
そう、感想は自分の肌感覚だけで十分だと思ってるんで。自分が実際に見たお客さんの反応だったり、感想を僕に伝えてくれる人の表情だったりを見ればだいたいわかる。半径5メートルの声だけでよくて、それ以外はなるべく目に入れないようにしています。
──ご自身を「不安定」と評されているのが意外です。視聴者として知るひとりさんはいつも安定している印象です。
そう見えるのは、不安定になる要素をずっと除外してきているからでしょうね。そこはもう、自分を過保護にしてる。もし人の感想や意見を全部聞いてたら、僕は頭が変になってると思います。
芸人の若手の時って、月に2回くらい演出家とか作家にネタ見せをやるんですよ。デビューした時から、ネタ見せのたびにいろんなことを言われる。でも言うこと聞いたって、別に大してうまく行かないんです。
やっぱり、実際に舞台に立って緊張感持ってやってる自分の考えの方が、絶対的に正しいわけですよね。それで、そういう意見を聞かないようにしてみて、ちょっとずつ軌道に乗り始めたりするんです。
でも、みんな何かを見たら語りたがりますよね。駄目出しをしたがる。僕もそうだけど、何か映画を観たら、あそこがああだ、ここがこうだ、って言いたい。でも、自分の作品のことは自分が誰よりも考えているし、自分の人生のことも自分がいちばんよく考えている。だから人の言うことはあまり聞き入れないようにしています。
ただ、僕が見ないというだけで、いろんな人の酒の肴になるのは我々テレビに出ている人間の1つの仕事かなと思います。酒の肴にならなくなったら、それはタレントとしてはもうおしまいだし。褒め言葉も悪口も、言われているうちが花ですよね。