世の中のほとんどは
断定できるほどシンプルではない
筆者自身、政治や経済について学習を始めた時に同じような感覚に陥ったことがあるので、高知東生さんのエピソードにすごく共感できます。
学習を始めた頃、ネットを探せばかなりのフォロワー数のいる人が信じたい情報を言い切ってくれていました。その頃は、その情報を鵜呑みにして「こんなことも知らないなんて、世の中は本当にバカばっかりだな」と人を見下していました。
今振り返れば、あの頃の自分は恥ずかしいほど何も知らない本当のバカでした。そして、自分には知識がないから「○○さんも言っている!」と権威に頼っていました。
しかし、そこで学習を終えず、さらに学習を続けることでこの世界は断言できるほどシンプルではなく、非常に複雑な仕組みでできていることを知りました。
例えば、減税するだけで経済成長できるという意見もありますが、2019年にノーベル経済学賞を受賞したアビジット・V・バナジーとエステル・デュフロが書いた『絶望を希望に変える経済学』(日経BP日本経済新聞出版本部)の中で「税率と成長の間に因果関係が存在するとは結論できない」(同書p256より)と書かれています。
非常に残念なことですが、世の中のほとんどは非常に複雑にあらゆる要素が絡んで構成されています。ふだん本を読まないような人でも読める200〜300ページの本で説明できるほど簡単なものではないのです。
それでも多くの人がわかったつもりになるのはなぜでしょうか?