過疎化が進む地元のために
――土地の所有者とどのように話をまとめてオープンしたのでしょうか?
牧野はエリアごとに組合が管理しているので、その組合に話を持ちかけて。今年5月に提案して、7月にはもうプレオープンできました。
ありがたいことに、牧野の方々が好意的で、やってみながら考えましょう、というテンションで始められました。
――スピーディーですね。
現在は月2回くらいイベントやテストでの利用がある程度なんですけどね。
牧野の組合長は、昔ラジコンが好きだったという方で、実際に牧野でドローンを飛ばす様子を見て「1台ほしい」といってくれたので、最近納品しましたよ(笑)。
――稲田さん自身が熊本出身だからこその着眼点だと思いますし、本当に他にないフィールドなんですね。
ちなみにフィールドの名前に使っている「手形」というのは熊本の黒川温泉の「入湯手形」(湯めぐりができる入湯券)が元ネタです。
2017年から南小国町の観光協会と共同で、「南小国ドローン手形」というドローンを飛ばせる場所を回れる観光コンテンツを運営していて。利用者はいろんな風景を撮れて楽しいし、町内を回って地元にお金を落としてもらうという狙いです。
これは500名以上の利用があって運営的に安定してきたので、ドローンの次のニーズに合わせて、企業利用を想定したフィールドを考えたんです。
――今後の展望は?
まだどうなっていくかわかりませんが、牧野側にとっては、プラスオンの収益になる“二毛作”なので、維持はし続けられると思っています。
ドローンの活用についても、地方の省力化に役立ってほしいというのが願いです。少子高齢化で地方でさまざまな環境を維持する労力ってえげつなくて!
これからその負担が減る要素もありませんよね。だから、IoTでもデジタル化でもドローンでも、使えるものは何でも使えるようにしていきたいです。
過疎地域では販売車による移動式スーパーですら撤退していたりするので、ドローンで輸送できれば一気に解決するというものでもないですが、テクノロジーは、進歩し普及していけばコストが下がっていき、多くの方が利便性を受け取れるようになるのが一般的です。ドローンもそうなっていけばいいなと思っています。
もともとガジェット好きでドローンの世界に飛び込んだので、ドローンにも地元にも一助になる事業を続けられればと考えています。
取材・文/宿無の翁
写真提供/稲田悠樹(コマンドディー)