放牧地帯の上空を借りる

――どのような開発が行われている段階なんでしょうか?

どの用途においてどの機体の形を使おうか、という技術開発で競い合っているところです。

ドローンといわれてイメージしやすい4つのプロペラが回っている形は、マルチコプター型と呼ばれるものです。垂直離着陸できて狭いところを飛べて空中で停止というメリットがある一方で、プロペラを回し続ける力技で浮いているので飛行時間が短いなどのデメリットもあります。

改正航空法へ国内最大級の「ドローン天国」が熊本に誕生。200haの土地を調達したのは地元思いの青年だった_5
現状で最も普及しているマルチコプター型のドローン

これから増えると考えられるのが固定翼機(飛行機型)。大なり小なり滑走路が必要で、空中では停まれないけれど、墜落しないし長距離飛べる。さらに緊急時には滑空でき、急に墜落しにくいんです。

また、マルチコプターと固定翼機の両方の機能を持ったVTOLと呼ばれる可変型の機体もあります。

現状のドローンの用途に適したマルチコプター型は1社寡占状態でしたが、法改正によって他の機体にも利用可能性が広がります。競い合って技術開発がぐんと広がり、ドローン自体もこれまで以上に普及するのではないかと。

だからこそ実証実験の場を提供したかったんですよ。

――これだけの大きな土地をどうやって調達したんでしょうか?

「阿蘇ドローン手形BIZ」は阿蘇だから開設できたんです。

阿蘇には放牧地である「牧野」が広がっています。この広大な草原は観光資源でもあるんですが、牛馬の放牧の後継者不足や、農業形態の変化に伴って利用されなくなってきて、その維持が問題になっています。

そこで、放牧していない牧野の上空を借りようというのがこのフィールドなんです。ドローンなら上空を飛ばすことがほとんどなので景観も維持できます。

――牧野として使っていた土地だからお手洗いや私道といった環境も整備されているわけですね。

そうなんです。「阿蘇ドローン手形BIZ」で借りた牧野も放牧はしていないですが、草を刈り取って出荷しているので管理されています。こんなにドローン向きの条件って、あとは北海道などで探さないとないんじゃないでしょうか。

改正航空法へ国内最大級の「ドローン天国」が熊本に誕生。200haの土地を調達したのは地元思いの青年だった_6
トイレや駐車スペースは牧野の施設を活用している