乗り物が“相棒になる”感覚
――ある意味、デコトラへの愛が、稼ぎという次元を超えている、ということなのでしょうね。
僕の親がもともと車関係の仕事をしていて、自分もバイクに乗っていたので、乗り物が“相棒になる”感覚はわかるんです。今もその感覚を持つ人たちがいるんだ、男気あふれる人たちが頑張っているんだと嬉しくもありましたね。
もちろん、今は「目立ちたい」という若い頃のハングリーさではなく、社会貢献に意識を向けている方も多い。皆さん、チャリティーのイベントをしたり、有事に物資を運ばれたりもしています。そういう素晴らしい志がある中で、実際にやっていることには無駄が詰まっている(笑)。そのギャップが、また魅力的なんです。
――デコトラを撮影する難しさ、苦労を感じるのはどんなときですか?
カウントダウンイベントの日は、吹きさらしの場所に数百台が集まるんです。それだけ密集していると人を避けて撮るのも大変ですし、どうしても排気ガスが増えてホコリっぽくもなる。その中で、いかにデコトラを瞬かせるかは難しいところです。
それと、電飾のタイミングですね。一斉に光るわけじゃなく、カチカチと点灯するものもあれば、順に光が点っていくものもある。光るタイミングを計算してシャッタースピードを調整していますが、ときには点灯する途中だったり、一部が消えているタイミングだったりが写ることもあります。でも、瞬間を切り取っているという意味では、それはそれでおもしろいのかな、と。
デコトラ登場当初から“映え”の感覚は存在していた
――デコトラとしては光っている瞬間こそが正解かもしれませんが、秦さんが撮られたモノクロ写真やパーツに寄った機械的なカットがとてもカッコよく。人が作り上げた無機質なパワーが、詰まっている感じがします。
トラックのステンレスの感じや、電球の光っていないときの造形ってカッコいいんですよ。写りはクリアではないけど、少し光が落ちている感じがよかったりもする。もちろん道を走っている瞬間こそが、“路上のアート”としての見せどころなんだろうと思ったりはしますけど。
あと、興味深いのは似た部品やパーツを使っているのに、それぞれが選び、それぞれの組み立て方をすると別物のデコトラになること。その違いやこだわりが、おもしろいんですよ。今は「映える」という表現がありますが、デコトラを作り始めた人たちはすでに“映え”という感覚は持っていたんだろうなと思います。