「冒険写真家」とも称される松本さんは、極北の大自然をフィルムに収めるために、一年の約半分をアラスカの無人の原野で過ごす。冬はオーロラを撮影するために、氷河の上でたった一人、数十日間に渡ってキャンプをするという。
私たちの日常とは別次元の「孤独」を知る松本さんは、「一人であること」をどのように受けとめ、その時間とどのように向き合ってきたのだろうか。やや無茶振りのようなインタビューに、松本さんは快く答えてくれた。
雪と氷だけの世界で、たった一人。でも寂しくはない
——松本さんは、一年の約半分をアラスカで過ごすそうですね。
正確には、夏は3ヶ月、冬は2か月を撮影のためにアラスカで過ごします。現地での準備期間も含めてなので、その間ずっと一人というわけではありませんが、いざ撮影がはじまってしまえば、そこからは何十日間も一人きりです。そんな生活をはじめて、もう20年以上になるでしょうか。とはいえ、ここ2年間はコロナ禍のせいでアラスカにも渡航できなかったのですが……。
——最後にアラスカで撮影をしたのは、いつですか?
2020年です。1月から3月にかけての50日間、デナリ山麓の氷河の上でキャンプをしながら、オーロラを狙いました。天候もまずまずで、キャンプ自体は順調だったのですが、いかんせんオーロラが出てくれなくて。ほとんど収穫なしで帰ってきました。自然が相手なので、こういう空振りも少なくありません。
——50日間も誰もいない氷河の上で過ごしていて、孤独感に襲われることはありませんか?
孤独は感じます。雪と氷だけの真っ白な世界のなかに、ポツンと一人でいるわけですからね。けれど、それはネガティブな感覚ではなくて。寂しいとか、心細いとか、僕はぜんぜん思わないんです。よく「どうして寂しくならないんですか?」と聞かれるのですが、僕にとってはそれが当たり前なので、うまく理由を説明できないんですよ。