「師」への感謝を込めた恩返し

試合は前半からドイツが主導権を握る形で進んでいた。防戦一方の日本は、我慢の展開を長く強いられた。

「(ドイツを)リスペクトしすぎた」

本来は攻撃が持ち味の選手ながら、守備に追われた伊東純也は、前半の戦いをそう振り返る。
だが、日本はどうにか前半を1失点でしのぐと、後半なかばからは怒涛の反撃。判官びいきで盛り上がる声援にも背中を押され、粘る日本は試合終盤に2点を奪って試合をひっくり返した。

「後半のような戦いなら、どんな相手でも戦える」

伊東はそう語り、胸を張った。

ドイツから学びながら、日本らしく、日本のよさを持って、世界に追いつき、追い越せ――。
まさに指揮官の言葉を体現するかのような勝利は、長年教えを受けた師への感謝を込めた恩返しにもなったはずだ。

7年前に亡くなったクラマー氏も、きっと喜んでくれているに違いない。

取材・文/浅田真樹 写真/AFLO