現代社会が生み出したモンスターも、
もしかしたら文化的価値があるのかも

さてさて。
冒頭でご紹介した、博物館の職員に対し「当日券を出せ!」と喚き散らすエセ紳士。
一歩も引き下がらないぞ、という強情な雰囲気を醸し出していたけど、果たして最後はどうなったのだろうか。

こうした理不尽な要求をするモンスターカスタマーが増加しているというが、それは日々刻々と変化する社会システムの微妙な歪みを反映した、現代文化の一側面だということもできるのではないだろうか。

東京国立博物館の特別展チケットは事前予約が必要ということは、博物館のホームページやSNSをフォローしていればすぐにたどり着ける情報だけど、ネットリテラシーの低い一部の人にとっては、寝耳に水のことともなりうるのだ。

1995年頃からはじまったIT革命によって社会は大きく変わり、今現在もまだWeb3.0が進行中で、新しい変化が次々と起こっている。
この変動についていかなければ社会からは取り残され、そのうち一部の人はモンスター化してしまうのだろう。
でもいずれ変動のスピードは(外見的には)落ち着くだろうし、そうしたモンスターを生み出さないような工夫を、社会全体でするようになるのかもしれない。

とすると150年後には、こんなモンスター紳士は、歴史の遺物となっているのかもしれない。
ならば今のうちに彼らを“人間国宝”に指定し、その言動をつぶさに記録しておいた方がいいのではなかろうか。

真面目に読んでくださっていた方には申し訳ないが、これが、本コラムのしょうもないオチである。
チャンチャン(注:昭和時代によく用いられた、話の終結を表す擬音語。150年後の“ワタシの無形文化財”候補)。


画像・文/佐藤誠二朗