2次元と3次元のあいだの人気ジャンル
マンガやアニメが映画やドラマとして実写化される場合、作品の中心となるキャラクターには、一般によく名の知られた俳優が起用されます。それは興行的な価値も考慮されていると思いますが、その俳優がすでに個人として備えている表象も含めて、キャスティングされていると考えられます。
それゆえに、配役が発表された時にキャラクターのビジュアルが公開されていないにもかかわらず、すでに「似てる/似てない」「合ってる/合ってない」といった議論が熱心なファンのあいだではなされるのです。原作ファンたちは発表された俳優の表象を参照しながら、原作のキャラクターの表象と俳優という対象のすりあわせをしています。
マンガやアニメなど2次元のキャラクターを、実際の人間として3次元で表現しようと試みた場合、どうしても生身の人間として演じる俳優の表象が介在することになります。
知名度のある原作に知名度のある俳優をキャスティングする背景には、たくさんの人の耳目を集めたいというだけでなく、観客の中にある程度の表象のある俳優を使うことで、作品中のキャラクターの表象を投射しやすいという利点もあります。あるいは反対に、これまでの表象を逆手にとって、それを覆すような表象を投射させることで、新たな面を表現したいといったこともあるでしょう。
不特定多数の観客が想定されるような大規模な作品がある一方で、よりコアなファンを対象にして制作される実写作品があります。それは「2.5次元文化」と呼ばれている、マンガやアニメやゲームを原作としたミュージカルや演劇の舞台作品です。近年、市場が急速に拡大しているエンターテインメントの一ジャンルです。
2.5次元ミュージカルや演劇の市場規模は、2000年には15作品26万人の動員で14億円でした。それが2018年には197作品278万人の動員で、その市場規模は226億円です(2019年、ぴあ総研資料)。
2018年末の『NHK紅白歌合戦』の企画コーナーには、世界で人気のジャパンカルチャーとして、ゲーム『刀剣乱舞―ONLINE―』を原案としたミュージカル『刀剣乱舞』の俳優たちが出演しました。ゲームのキャラクターとして演じ、歌と踊りのパフォーマンスを披露したのを観た人もいるでしょう。
2.5次元文化の演劇やミュージカルといった舞台作品では、実写化映画やドラマと同様に、マンガやアニメ、ゲームなどに登場するキャラクターたちを生身の人間である俳優らが演じます。しかし、先ほどまでの実写化作品と比べて、2.5次元文化の演劇やミュージカルといった舞台作品には大きく異なる点がふたつあります。それはいったいなんでしょうか?