善戦どまりは勝負弱さのあらわれ
それでも、日本がセットプレーによる攻撃を得意とし、失点も多いが、得点も多いというならまだいい。
しかし、実際はセットプレーの攻撃もまた苦手としている。全10試合を戦ったアジア最終予選でもセットプレーからの得点はひとつもなく、その後の試合を振り返っても、8月のE-1選手権(東アジア選手権)でCKから佐々木翔がヘディングで決めたゴールがあったくらいだ。
およそ10数年前にさかのぼれば、日本代表にもセットプレーを武器にしていた時代が確かにあった。
中村俊輔や遠藤保仁らの優れたキッカーだけでなく、田中マルクス闘莉王や中澤佑二というヘディングに強い選手も擁していたからだ。2010年ワールドカップ南アフリカ大会では、日本代表が大会前の低評価を覆してベスト16進出を果たすなか、本田圭佑と遠藤が鮮やかなフリーキックで得点したことを記憶している人は多いだろう。
試合内容の良し悪しにかかわらず、より勝利の確率を高めるには、セットプレーからの得点が不可欠。だが、悲しいかな、今の日本代表にはそれがない。
現在の日本代表は、海外組の選手が圧倒的多数を占めている。10数年前には考えられなかったほど、豊富な戦力を有していると言ってもいいだろう。もはやワールドカップで対戦する世界的スター選手でさえ、彼らにとっては日常的な対戦相手だ。
ところが、せっかく戦力が揃い、どんな相手にも内容的には悪くない試合ができるようになっても、セットプレーを生かして勝利をかすめ取っていくようなしたたかさは見られない。
いくら試合内容がよかったところで善戦止まりで終わってしまえば、むしろ“勝負弱さ”を印象づける材料にさえなりかねない。
世界的に見ても、セットプレーの重要性は高まる一方だ。各チームがセットプレー専門のコーチを置き、分析にも力を入れる時代に入っている。日本代表にしても、新たにセットプレー担当として上野優作コーチを迎え入れ、改善に動いてはいる。
しかし、事態は一向に改善する気配を見せていない。
長らく続く“一発病”を克服できるか否か。来たるワールドカップでの日本代表を占ううえで、重要なカギとなることは間違いない。
取材・文/浅田真樹 写真/AFLO