コロナ禍で騒音トラブルが3割以上増加

引っ越す前であれば、それらの情報を基に判断することも可能だが、既に住んでいる場合はそうはいかない。トナリスクには現に起きている隣人トラブルが持ち込まれることも多い。

中でも、「当社に寄せられる相談の大半が騒音に関するものです」と松尾代表は説明する。

実際、環境省の「騒音規制法施行状況調査」を見ても、騒音に関するトラブルは増加傾向にある。
2020年度に全国の地方公共団体が受理した騒音にかかわる苦情件数は2万804件で、前年度比の32.3%増となっている。

松尾氏は「これにはコロナ禍の影響がある」と指摘する。コロナ禍で自宅にいる時間が長くなったため、今まで聞こえなかった昼間の物音やリモートワークでの話し声が気になるという人が増えている。また夜中のYouTube配信やゲーム実況といった類の騒音も多いという。
騒音以外では、タバコの煙などの臭い(マンションの部屋の中で吸ったタバコの煙が、換気扇などから外に流れ出る)、不審者のうろつきなど、トータルで月間40件ほどの相談がある。

住民同士の勘違いがトラブルになるケースも

過去に相談された隣人トラブルの中で、松尾代表が印象的だったものを紹介してくれた。

一つは、「チラシばら撒き事件」。広告チラシがアパートの郵便ポスト付近やエントランス一帯に散乱していて、これを隣人がばら撒いているという相談がアパート住民からあった。

コロナ禍で騒音トラブル昨年比3割増。「隣人ガチャ」で外れを引かないコツと対策法を専門家に聞く_2
現地での実際の写真。大量のチラシが散乱していた(写真提供:トナリスク)

トナリスクのスタッフが状況を確認しに行くと、大量のチラシは確かにあった。しかし相談者の情報を確認するため隣人にヒアリングをすると、新たな事実が発覚した。

「相談者が隣人の郵便ポストに勝手に大量のチラシを入れていたのです。しかも他のマンションからも、わざわざチラシをかき集めてきていました。ポストを開けたときにどさどさとチラシは落ちますが、隣人は気持ち悪いから放置していただけでした」

実は、相談者が隣人に嫌がらせをしていることで、そうした事態が起きていたのである。

相談者はなぜそんな嫌がらせをしていたのか。発端は実にささいなことで、アパートの廊下の窓の開け閉めが原因だった。相談者はコロナ対策で常に換気をするため開けていたいのに、隣人が雨の日などに閉めることに腹を立てていたという。

「明らかに相談者の方が悪く、管理会社も証拠映像を持っていたので、しばらくして相談者は退去通告を受けていました」

お互いの勘違いからトラブルが勃発するケースもある。

「マンションの下の階の住民にガンガン音を鳴らされており、眠れないし、仕事も手につかずに悩んでいるという相談が来ました。実際に自宅を訪問し、1時間ほど滞在したのですが、そのときにはいっさい音が聞こえてきませんでした。今度は下の階の住民にヒアリングすると、何もやっていないのに言いがかりをつけられて困っているとのことでした」

双方の言い分などを聞いているうちに、松尾代表は「勘違い」や「思い込み」が原因だと推測する。

「家の床が軋んでパチっと音が鳴ることがありますよね。それが嫌がらせの音に聞こえてしまうことはよくあります。そうしたボタンのかけ違いから、お互いがいがみ合い、被害者にも加害者にもなってしまうのです」