大学駅伝三冠のカギは4年生の活躍
全日本大学駅伝では3区を走った。1秒差の2位で中継所を出発した。
「つなぎ区間よりも、速い選手がいっぱいいる区間だったので、追いつかれても後半に引き離せるように余力を残して走りました」と言うように、駅伝ならではのクレバーな走りを見せた(結局、後続に追いつかれることはなかったが……)。
山野は早々に先頭を奪うと、2位に38秒もの大差をつけて独走体勢を築いた。
「毎年、全日本では前半で遅れてしまい、“後半頼み”っていう展開が多かった。なので、今回は、1区から3区の3人で話し合って、前半組でしっかりトップに立つっていう目標を立てました。次は、初めての駅伝となる1年生の山川(拓馬)だったので、どれだけ貯金を作れるかなと思って走りました」
そんな目論見通りの走りだった。以後、駒澤大は先頭を譲ることがなかった。
山野は、区間5位という順位以上の、見事な働きぶりだったと言えるだろう。
全日本大学駅伝で3年連続15回目の優勝を果たし、これで今季の大学駅伝で二冠目。あとは箱根駅伝を残すのみ。大八木監督にとって悲願だった大学駅伝三冠にリーチをかけている。
今季の駒澤大の大黒柱は、エースの田澤であることは間違いない。また、田澤だけでなく、スーパールーキーの佐藤圭汰(1年)、長期のケガから復活した鈴木芽吹(3年)ら、タレントが豊富なのも今季の特徴だろう。
とはいえ、エースの力だけでは勝つことができないのも駅伝の醍醐味でもある。よくいわれることだが、大学駅伝では4年生の力が必要不可欠だ。
「あの3人はいいトリオです。仲もいいです」
大八木監督は田澤、山野、円の4年生3人について、こう評する。田澤のパフォーマンスがあまりにも突出しているが、山野、円がきっちり仕事を果たしているからこそ、今季の駒澤大の好調ぶりがあるのではないだろうか。
「4年生みんながチームを引っ張ってくれているんですけど、中でも山野と自分、田澤の3人は、それぞれキャプテン、副キャプテン、エースという立場で、お互いに高め合ってきました」
出雲市記録会で好走を見せた後に、円はそんなことを話していた。
三冠をかけた最後の箱根駅伝でも彼ら4年生の走りがカギとなるに違いない。
取材・文・撮影/和田悟志