大学野球に衝撃を与える「京大旋風」

この春、京大野球部が世間をあっと驚かせている。
4月2日の開幕戦で昨秋優勝の関大に逆転勝ちし、勢いのまま2勝1敗で40年ぶりの勝ち点をつかんだ。5月に入っても勢いは衰えない。立命大には初戦に負けたあと、連勝で20年ぶりに勝ち点獲得。リーグ戦優勝回数最多の近大からも勝利を挙げ、メディアが大きく報じた。4月22日の立命大戦では侍ジャパンの栗山英樹監督が観戦し、「びっくりするくらいレベルが高かった」と言わしめた。

5月10日、3番を打つ伊藤伶真内野手(4年=北野)は3安打で立命大戦の勝利に貢献。最下位脱出を決めた。内野安打でヘッドスライディングするガッツマンは内心、ほくそ笑んでいるはずだ。22年春の野球部パンフレットで「テンションが上がる瞬間は?」と問われ「社会が僕らに注目した時」と答えている。

侍ジャパン監督も驚愕! 京大野球部が実践する「圧倒的強者の倒し方」_a
内野安打で出塁してガッツポーズする伊藤伶真内野手

かつては最下位が「指定席」だった。「どうせ負ける」とレッテルを貼られていた。だが、いまは違う。阪神・村山実や阪急・山口高志らを輩出した関大を倒した。阪神・吉田義男やヤクルト・古田敦也らを生んだ立命大にも競り勝った。履正社、報徳学園、智弁和歌山…。相手校の選手たちの出身校は甲子園常連校がずらりと並ぶ。そんな野球エリート集団にひるまず挑み、互角の戦いを演じる。

京大が試合をすると「何かやるんじゃないか」と期待感に包まれる。弱者に肩入れする、日本人好みの判官びいきだけではない。知恵を振り絞って強者と互角に戦う姿には、ロマンがあふれている。最高学府の頭脳が集めた野球データも要因の1つだろう。だが、もっと大きな変化があった。

彼らは”夢”を語るようになったのだ。