サプライズ解散の名目は「原発」
古賀 僕は岸田さんが「原発解散」を仕掛けてもおかしくないと考えています。というのも今年8月に岸田首相は原発の新増設の方針を打ち出したでしょ? この新増設は国民の反対が根強くて、あの安倍さんでも容易に口にできなかった政策なんですよ。それを岸田さんはぶち上げた。
ただ、新増設は再稼働と違ってハードルが高い。すぐに選挙のテーマにするのは危険です。
そこで、岸田政権は「この冬は電力不足になる」と盛んに危機感を煽る作戦に出ています。電力不足をアピールすることで、今ある原発は動かしてもいいでしょうと原発再稼働を正当化する計算です。
この電力不足アピールをさらにエスカレートさせ、「真冬に電力不足で停電になれば、凍死者が出てもおかしくない。そうならないよう、規制委が止めている原発を政治判断で再稼働できる法律を成立させたい。これは一刻を争う問題だ! それなのに野党が大反対しているから、その可否について国民に直接判断を仰ぎたい」と、解散総選挙を仕掛けるというシナリオはありうる。
具体的には東電柏崎刈羽原発の再稼働をめぐり、国民に信を問うというシナリオ。冬の電力不足を理由とするのが最も早いタイミングだけど、夏の電力不足を理由にして、サミット後に解散というタイミングもあり得る。
高橋 岸田首相のそばには元経産次官で東電の内情に詳しい嶋田隆筆頭秘書官がいるね。
古賀 そう。嶋田さんは3・11後に東電が一時国有化された時、経産省から執行役員として出向し、東電経営を3年間支えた。次官退任後は東電会長に就任すると目されるなど、東電の分身みたいな官僚だったんです。
その嶋田さんが岸田さんに請われて今、8人いる秘書官の筆頭格に収まっている。電力危機を訴え、東電・柏崎刈羽原発を政治判断で再稼働できる法律作りを進めるなんて、嶋田さんがいればそれほど難しいことじゃない。そのスキームを利用して、追い込まれた岸田首相が「原発解散」に打って出るというわけです。
――円安による物価高など、国民は日々の暮らしで大変なのに、そんな時に解散・総選挙ですか?
高橋 別に選挙をしたって、解散するのは議会だけで、政府はそのまま続いている。むしろ、政治家が選挙にかまけて干渉がない分、事務的に行政はスムーズに回るんだよ。そのことは岸田さんが一番よくわかっているはず。検討するばかりで決断しない“検討使”が、大勝負に出るのかどうか注目したい。
撮影/村上庄吾 AFLO