スマホに残った動画を取り戻そうとする塾長

「女Aに『性行為しよう』というと同意しました。キスをして舌を絡め、胸や性器をさわり、ワンピースを脱がせました。ストッキングを脱がせる時、女Aに『一瞬腰浮かせて』というと協力して浮かせ、ストッキングを脱がせてからコンドームをつけて挿入しました……」

彼の主張としては、被害者らとは合意のもとに性交したにもかかわらず、被害を受けたとう虚偽の訴えがなされている……ということのようだ。公判の最終意見陳述でも、きっぱりと冤罪を主張した。

「被害者のふりをして嘘の話をする人間を信用し、冤罪の判決を出している。明らかに真実でない話をしている人間を信用することなく、公正な判決を下されることを望みます」

こうした主張は判決において全て退けられ、3件ともに被害者や共犯である塾生らの証言が認められ、被害者が「抗拒不能」な状態にあるなか、W塾長はそれに乗じて性交したと東京地裁は認定した。

塾長Wのなかでは、あくまでも自分は冤罪の被害者だったようで、この2020年3月に言い渡された一審判決を不服として控訴。東京高裁の控訴審でもこれは棄却されたが、さらに最高裁に上告。今年1月、最高裁第3小法廷は塾長Wの上告を棄却する決定を下している。
これにより懲役13年とした一審・二審判決が確定した。

だが彼の戦いは終わっていなかったようだ。

塾長Wや塾生らが逮捕前に使用していたスマホは証拠として押収されており、そこには被害者らが酩酊状態で被害に遭う動画が残されている。被害者らは、動画に犯行の様子が記録されていることについて公判で不安を吐露していた。いつ誰に拡散されてしまうか分からないという不安からだった。

なんと塾長Wは、この犯行動画が収められたスマホなどの還付を求めても別途、争いを続けていたのである。

当初、東京地検に対し、このスマホなどの還付を求めていたが「データの削除に応じれば還付する」と伝えたところ、塾長Wは申し出を断ったため、還付がなされなかった。
これを不服として抗告するなどしていたが、2022年7月、抗告も棄却された。

取材・文/高橋ユキ