四季を見ることで後悔を防ぐ
下調べもそこそこに、その土地に縁を感じたことを最大の理由に思い切って移住した、という移住成功者を筆者はたくさん見てきたし、移住にはそのような思い切りが大切だと強く感じている。
しかし、できる限りよく調査してから決めたいという人には、その土地を見定めるポイントとして「四季を見る」ことをおすすめする。たとえば海辺や川べりなどは、夏に訪れると最高の雰囲気を感じることができるだろうし、緑に包まれた山のふもとなら、秋には素晴らしい紅葉が期待できるだろう。
だが、そんなベストな季節だけでなく、真逆の季節、つまりオフシーズンを事前にチェックしておく。そうすれば、移住後にイメージと違って後悔した、なんていう事態は避けられるかもしれない。もし可能なら、四季それぞれの土地の表情を確認しておけば、移住後の暮らしがよりイメージしやすくなるだろう。
家探しは「直接交渉」が有効
家探しは、移住の楽しみであり、また移住を難しくする最大要因のひとつでもある。土地を購入して新築を建てるという人は別として、中古物件を購入するとか、貸家を探すといった想定なら、どうやって理想の物件にたどり着くかが大きな問題となってくる。
都市部で引っ越すなら、物件情報サイトを活用したり、現地の不動産会社に紹介を依頼したりするのが一般的だろうし、それで十分に事足りる。ところが田舎であればあるほど、こうした方法での家探しは難しくなる。
試しに○○県○○郡○○町と、田舎と思われる実在の地域を指定して物件情報サイトで検索してみるといい。その地域にも空き家はあるはずなのに、驚くほど情報がヒットしないはずだ。
現地の不動産会社に行けば、こうしたサイトに登録されていない物件を紹介してもらえる可能性は高まるが、そのような努力を何度重ねても目当ての物件が見つからないということが実は意外に多い。
空き家は確かにあるはずなのに、なぜ情報が出てこないのか。それは物件を所有する人が、貸したがらないというケースがとても多いからだ。都会の感覚では想像しにくいかもしれないが、赤の他人に家を貸すのはちょっと不安だし、賃料収入は求めていないというオーナーが田舎には多いのである。
ゆえに、有効なのは「直接交渉」である。目当ての土地を歩き、興味のある物件が空き家のようであれば、近隣の人に訊ねるなどして所有者を探してみるのだ。そうやって探し出した所有者に、直接、貸し出してほしいと交渉して家を借りてしまったという人と、筆者は何度も出会っている。
このように、不動産会社に登録されておらず、良質なのに空いているという物件が地方には少なくない。現地で直接交渉するという手法は、田舎の家探しにおける常じょう套とう手段だ。礼儀だけは忘れずに、ちょっとした勇気を持って交渉してみよう。
* * *
後編では、実際に移住した後の人間関係や子育てについて体験談も含めて紹介する。
後編を読む(11月3日14時公開予定)
写真/shutterstock