行動を起こすことで、人や組織を変えていく

この作品ではキャサリンだけでなく、彼女の親友のメアリー・ジャクソン(ジャネール・モネイ)とドロシー・ボーン(オクタヴィア・スペンサー)の活躍も丁寧に描かれています。

メアリーは、技術面での高い考察力を持っていましたが、白人専用の学校での学位がないとNASAの航空技術者になれないことを知り、裁判を起こします。前例がないとつっぱねていた判事に熱意が伝わり、入学の許可を勝ち取ることに成功。全米初の黒人女性航空技術者となります。

ドロシーは、NASA黒人女性計算チームのチーフ的な存在として活動していた女性で、IBMの最新型スーパーコンピューター導入が決まり、計算手たちが職を失う可能性を見越して、すぐにコンピューターの仕組みやプログラミング言語を覚えます。それをチームの女性たちにも指導し、ドロシーがコンピューター技術者として抜擢されるだけでなく、見事チーム全員の移動を成功させ、後にNASA初の黒人女性管理職となります。

人を動かすほどのひたむきな仕事ぶりや、代わりのきかないほどの頭脳や能力が、人や組織を変えていく。差別が当たり前だった時代、声をあげるだけでは、きっと変わらなかっただろうと思います。

ロケット打ち上げの際、宇宙飛行士の名前は耳にしても、技術者や、ましてや計算手の名前を聞くことはなかなかありません。
この映画を見て、全人種の女性の地位向上に貢献した先駆者たちがいたことに驚くとともに、世の中で見聞きする華々しい功績やニュースには、それを支える人がいることを思い出させてもらいました。

見どころふたつめは、映画を明るく彩る60年代ファッション、そしてシーンにマッチした音楽。

60年代のクラシカルなヘアスタイルや洋服は、当時のアメリカにタイムスリップした気分。冒頭で主人公の仲良し3人組がおしゃべりしながらNASAに向かう道すがら、車が故障してしまう場面で出てくる、ミント色とホワイトの2トーンカラーのシボレーもなんともかわいい。

『HAPPY』が大ヒットするなどグラミー賞をいままで少なくとも30回は獲得しているファレル・ウィリアムスが製作と音楽にかかわっていて、この映画のために楽曲を書き下ろしています。ポップな楽曲は差別など重いテーマを含む映画に軽快な印象を加えてくれています。

聡明さと情熱を併せ持つ女性たちにしびれ、ポジティブなエネルギーをもらえる映画です。