原作者の喜ぶ顔はアニメ制作のモチベーションに繋がる
――原作者である藤本タツキ先生から提案されたことはありますか?
コミュニケーションを取るタイミングは随時あるのですが、中でも「自分の意思としては、良い映像が見たいということが1番大きい。そのためにできることは何でもやります。僕が何かの書類にハンコを押した方が良ければ、今この場でハンコを押します」とおっしゃられていたことが印象に残っています。おそらく冗談だとは思うのですが、すごく藤本先生らしい忖度のない意見だと思いました(笑)。それもあって各キャラクターのデザインやキャストを決める時、絵コンテのチェック、映像表現など、逐一、藤本先生から意見をいただくようにしています。
――制作過程を見られての藤本先生の反応はいかがでしたか?
みなさんがイメージされているように多くは語られない方なので、細かい感想や要望が来ることはありません。ただ、アフレコや音響に立ち会うタイミングで完成途中の映像を確認される際、特にいい芝居や動きをしているキャラクターを見ると顔が緩む時があるんですよ。笑って楽しそうにしていて。それは現場の人間として嬉しくなります。
原作を預かる側としては『チェンソーマン』を1からつくってきた藤本先生や編集者の林(士平)さんが考える「何をもって『チェンソーマン』とするか」に対して、できる限りアジャストできるよう考えています。だからこそ、原作者の藤本先生が喜んでくれることは我々アニメ制作をする人間のモチベーションに繋がります。
――それは“原作を忠実に再現していく”ということなのでしょうか?
必然的にアニメオリジナルの要素を足さないとアニメの尺にはならないんですよね。マンガは絵とコマ割りで時間軸が表現されていますが、映像はリアルの時間軸で表現していかないといけません。ですので、“原作を忠実に再現する”というよりは、”原作を映像化した際により忠実に見えるようにする”という考えで制作しています。
原作の持つテンポ感や空気感を映像化した時にどれくらいの間や尺を使ってストーリーを展開していくか、中山監督と脚本家の瀬古(浩司)さんの2人ですごく議論していました。