年金制度が子供の自由な生き方を可能にしたが…
日本の世帯の割合としては単身者世帯が多数を占める国になりつつあり、2015年時点で単身世帯が約35%を占めており、2040年には40%に達すると言われています。
そもそも、なぜ単身者が増えるようになったのでしょうか。要因はたくさんありますが、そのひとつに年金制度などの社会保障制度が考えられます。
今の時代は自分の親は親の年金で生活することが一般的ですが、年金制度が導入される前は親は子供が面倒を見るのが一般的でした。これは「私的扶養」と呼ばれる状態です。
しかし、年金制度が導入されることにより自分の親を自分一人で面倒を見るのではなく、社会全体で扶養するようになりました。これを「社会的扶養」と言います。つまり、年金制度が親を扶養してくれるおかげで子供世代は自由な選択をすることができるようになったわけです。
筆者は長男でありながら、親と離れて生活しています。これも年金制度のおかげでしょう。年金がない場合、仕送りという手段もありますが、やはり同居する方が金銭負担は軽減されますし、そういう意味では年金制度がないと成立しないと思っています。
しかし、この状態ではジレンマが生じます。親を社会的扶養できたおかげで子供の生き方の選択肢が増えました。結果、子供を持たないという選択肢ができましたが、年金制度は次の世代がいるおかげで成り立つものです。
いわば年金制度が年金制度の首を絞める状態になっているわけです。
これは日本に限らず、先進国は少子化の傾向があり、年金制度のためにも少子化対策が必要となりますが、日本は手を打つのが遅すぎました。
少子化対策のために税金を使うと政府が発信した際に、子育て世帯が多ければ支持を得られるでしょうが、いまや子育て世帯は多数ではありません。この国の多数派は高齢者であり、単身者です。