具材が違えば味の印象も変わる

丼の問題と合わせて意識したいのがビジュアル面です。食欲をそそる彩りや、食べやすい盛り付けは、食事の第1章。今なら「インスタ映え」なども無視できないほど、見た目は味の印象を左右します。

たとえば、スープと麺が同じラーメンでも、載っている具材が違ったらどうでしょう。「モモ肉のチャーシュー、ほうれん草、輪切り葱、メンマ、ナルト」と、「鶏と低温調理の豚の2種類のチャーシュー、水菜、白髪葱、穂先メンマ、糸唐辛子」では、その印象はまるで違います。同じ味だと気づかず、前者は昔ながら、後者は現代的と鵜呑みにする人が大半でしょう。私だって判別する自信はゼロ。

そうした誤解もある反面、ラーメンの見た目から店主の意図を読み取ることも可能です。葱や生姜が中央にまとめられていたら「まず何も混ざらない状態でスープを楽しんでほしいんだな」と想像がつきますね。桃色の低温調理チャーシューなら、そのままの状態を維持するために端によけたりも。また、ラーメンの写真を撮る人の中には、はじめからレンゲが入っているのを嫌う人がいますが「レンゲがスープで温まった状態で使ってほしい」という店主の配慮かもしれません。

ラーメンは見た目が9割!? ビジュアルで味が変わる不思議_b
具材の色ひとつ違えば印象も変わる

デザインとしてのラーメン

近年は、麺線(麺の並び)をきれいに揃える店が増えました。澄んだスープの中に整列した麺は、たしかに美しく見栄えもするのですが、麺によってはかえって引き抜きにくかったり、細麺同士が何本もガチッとくっつき、残念な食感になっている店も……。そんなときは慌てず、自分で手早くほぐしましょう。

個人的に興味深いのは、高田馬場「渡なべ」が、白葱の上に青葱を載せたこと。これが地味ながら超画期的で、実は数々の有名店も、あと追いで取り入れているのです。豚骨ラーメンに青葱の緑はマッチしますが、茶系のスープの上では明度的に重たい。そこに白葱を挟むことで、青葱が品良く映えるのです。また、私が某店からアドバイスを頼まれたときは、隣接した海苔とほうれん草の位置を離すよう助言しました。ほうれん草の緑が海苔の黒に引っ張られ、暗く見えたからです。

ナルトは今でこそラーメンの象徴、懐かしさすらあるアイコンですが、もとはおかめ蕎麦からの借り物ですし、古い文献をあたると「正に邪道」「しょう油の色にマッチする訳がない」と断ずる記述もあります。たとえ今のラーメンに珍奇なものが載っていても、それが未来に定番化する可能性は大いにあるのです。

教養としてのラーメン ジャンル、お店の系譜、進化、ビジネスーー50の麺論
青木健
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2022/1/18
1705円(税込)
単行本ソフトカバー 192ページ
ISBN:9784334952884
『教養としてのラーメン ジャンル、お店の系譜、進化、ビジネス――50の麺論』(光文社)
日本人にとっての国民食、ラーメン。お店のこと、味のこと、作り方の話、店主の話、ビジネス的側面、ラーメンファンのこと、ご当地ネタ、歴史などの基礎知識・うんちく・トレンドなど網羅したラーメン全体を俯瞰し見渡す一冊。
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