偏見の解消には専門的なスキルを

そんなことを考える中で最近目についたのは、P&Gジャパン合同会社の取り組みでした。同社は、ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みの三本柱として、「文化」「制度」「スキル」をあげています。「文化」や「制度」はよく見かけますが「スキル」というのは、あまり他では見られないので、目を引くものでした。

P&G社のWebサイトにはこのスキルについて「社員が日々の業務の中で多様性を引き出し、活用し合うスキル(能力)の育成」と書いてあります。

取り組む動機が「思いやり」であれ、学習した結果であれ、その動機を形にし、ビジネスなどに活かしてアウトプットしていくためには、ジェンダーに関する知見に加えて、各分野の知見が必要であり、その各分野に落とし込むためにはまさに「スキル」が必要になるはずです。

例えば、ビール・スピリッツメーカーとして有名なキリンビールでは、「女性」社員が子会社としてSPRING VALLEY BREWERY株式会社を立ち上げたといいます。ビールは中高年の男性が飲むもの、という固定的なジェンダーのイメージを覆し、見た目も色とりどりで、飲みやすいクラフトビールが、新たなビール文化をもたらしつつあり、ビール消費者の間口を広げることに貢献しているといいます。

このように、職場や組織のさまざまなレベルで、ジェンダーに関連する取り組みを展開することは不可能ではありません。そして、すでにいくつかの先進的な企業はジェンダーの視点をビジネスの場面でも展開しています。そのような企業には、ビジネスを通じてどのようにジェンダー平等の構造的な構築につなげられるかまで、さらに切り込むことが期待されます。

文/神谷悠一 写真/shutterstock

差別は思いやりでは解決しない
ジェンダーやLGBTQから考える
神谷 悠一
アンコンシャスバイアス――無意識の偏見は「思いやり」がないから生じるのか?_2
2022年8月17日発売
902円(税込)
新書判/224ページ
ISBN:978-4-08-721226-6
思いやりを大事にする「良識的」な人が、差別をなくすことに後ろ向きである理由とは――。「ジェンダー平等」がSDGsの目標に掲げられる現在、大学では関連の授業に人気が集中し企業では研修が盛んに行われているテーマであるにもかかわらず、いまだ差別については「思いやりが大事」という心の問題として捉えられることが多い。なぜ差別は「思いやり」の問題に回収され、その先の議論に進めないのか? 

女性差別と性的少数者差別をめぐる現状に目を向け、その構造を理解し、制度について考察。「思いやり」から脱して社会を変えていくために、いま必要な一冊。「あなたの人権意識、大丈夫? 
“優しい”人こそ知っておきたい、差別に加担してしまわないために――。価値観アップデートのための法制度入門!」――三浦まり氏(上智大学教授)、推薦!
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