久保の過去の在籍クラブと現レアル・ソシエダとの違い
――久保建英が昨シーズン所属していたマジョルカでは、結果として1ゴールのみと、あまり活躍ができませんでした。マジョルカとレアル・ソシエダの違いはどういう部分でしょうか?
ビジャレアル時代を除きますが、過去3シーズン、マジョルカとヘタフェという、基本的に1部残留が目的のチームに久保は在籍していました。残留目標のチームだと、どうしても守備に追われる時間が、久保のみならずチームとして多くなります。
「低い位置でまず守備をしてから攻撃に移る」という形になり、攻撃にあまり枚数を割きません。そうなると攻撃時に久保の近くに味方がおらず、基本的には「久保一人に頼む」というカウンター攻撃になりやすいんです。その場合、一人で2、3人を相手にしなければいけないので、コンビネーションを得意とする久保の良さがなかなか出せません。
また、低い位置の守備だけで考えた時にはどうしても「他の守備的な選手と比べるとやっぱり守備ができないよね」というマイナス評価にも繋がりやすい。つまり、どちらかというと不得意なことをまずメインでやらされて、なおかつ攻撃ではより難易度の高いことを求められていた。簡単に言えば、久保の特徴とチームのスタイルが、ミスマッチだったのだと思います。
一方レアル・ソシエダでは「基本的にハーフウェーラインより低い、自分達の陣地に戻らなくて良いよ、守備の時には後ろは任せてくれ」というサッカーが可能です。その代わり攻撃時では、ピッチの最後の3分の1、ゴールを決めるエリアでの仕事が求められます。
開幕戦でのゴールがまさにその形だったんですが、チームとして高い位置の守備でボールを取ってくれて、久保は前に攻め残りしているので、最終的なラストパスが入ってくる。攻撃に専念できるという意味で、あのゴールシーンは象徴的だと思います。
もちろん久保はこれまでの3年間で、より守備をする、ハードワークする、という面の能力を伸ばしたと思います。ただし、久保の本当の武器や強みを発揮する、というチームではなかった。それが発揮できるチームに初めて入ることができた、ということを考えると、開幕からの順調なプレーぶりは、当然の活躍でもあると思います。
――では久保建英自身、これまでより純粋にサッカーを楽しめているような環境でしょうか?
それは間違いないと思いますね。これはトップレベルの選手でないと分からないフィーリングなんですが、これまでのチームだと「自分が欲しいタイミングでボールが入って来ない」ことが多かったと思うんですね。そうすると動き直したり、ボールに近づき過ぎたりするプレーが増えて、より苦しい状況でボールをもらうことが多くなります。
上手い選手たちと一緒にプレーすると、欲しいタイミングで良いボールが入ってくるので、ボールを受けた時点で相手が周りにいなくてチャンス、となります。レアル・ソシエダは久保一人だけでなく周りの選手も当然上手いので、過去の在籍チームと比較しても、今は一番楽しくプレーできているだろうし、相当充実しているのではないかと思いますね。