外の世界に思いを馳せた祖国キューバでの暮らし

キューバの首都ハバナで1988年に生まれたアナは、14歳のときにキューバ・ナショナル・シアターで演劇の勉強をスタートしました。授業に参加するため、ときにはヒッチハイクして学校まで行ったそう。初めてインタビューしたのは『ブレードランナー2049』(2017)のとき。彼女がアメリカに住み始めて3年半が経ったころでした。

金色に見える目を輝かせて、キューバでの生活を教えてくれました。

Netflix初の18禁映画『ブロンド』でマリリン・モンローを演じる、アナ・デ・アルマスのど根性人生_4
©HFPA

「厳しい社会主義の国だから、普通の人たちには贅沢は許されません。私の家庭はお金持ちではなかったので、もちろん車はありませんでした。キューバではないものねだりをする人はあまりいないし、みんながそれぞれハッピーに生活をしていました。今でもそうです。贅沢なものがなくても幸せな子供時代だったと思っています。

とはいえ、一般家庭にWi-Fiはなかったので、世界で起こっている出来事を知る手段が限られていました。テレビはあってもDVDやプレイヤーはなく、映画を見るために隣人の家にお邪魔して見ていたほど。映画を通じて違う世界のことを垣間見るたびに、“キューバの外の世界を見てみたい”と思っていました」

幼い頃に抱いていた外の世界への憧れをストレートに語りながらも、「キューバが大好きだし、今でもできる限りキューバに帰っています」と、故郷への愛もしっかりと口にする。ハリウッド俳優になった今も、彼女の心の中心にしっかりと故郷があることがわかります。2年後に『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)の取材で会ったときは、こうも語っていました。

Netflix初の18禁映画『ブロンド』でマリリン・モンローを演じる、アナ・デ・アルマスのど根性人生_5
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「この映画で私が演じるのは、スペイン語のアクセントがあるナースのマルタ役。移民家庭の女性です。アメリカに不法入国した彼女の状況は、私の場合と違うけれど、とてもよく理解できます。映画の中でマルタを雇っているファミリーのように、何をしても許されると思っている自分勝手な富裕層の人たちを、私も知っていますから。この映画に救われるのは、資産家ファミリーのいやらしさを、ユーモアと共に暴露していることです」

貧富の差と移民問題を巧妙に盛り込んだ映画への参加は、アメリカでキャリアを築く外国人のアナにとって、大きな意味を持つものだったのでしょう。彼女の人間的な魅力と、思慮深さを感じました。