犯人の本当の狙いは何だったのか

犯人グループはなぜ突然、姿を消したのか。現金など、何一つ奪取できていないままだったのに。後に、犯人グループが大手菓子メーカーを脅迫していたのは、見せしめのためだけで、他の食品メーカーと水面下で取引をしていたのではないかとか、株価の乱高下を利用して株取引で儲けたのではないかとも言われました。確かに派手なパフォーマンスのわりに、身代金に対する執着が薄かったように思われます。

大手菓子メーカーに対する脅迫は、マスコミが大々的に報道してくれる。それを見ている他企業は、同じ目にあいたくないため水面下での取引に応じるようになりやすい。また、自分たちの動きひとつで株価は乱高下するわけだから、そこで儲けることはたやすいようにも思えます。あの大手菓子メーカーへの脅迫は、単なる「PR」に過ぎなかったのでしょうか。

結局、警察もマスコミも、「企業脅迫」という表の顔にこだわり過ぎて、本質を見落としていたのかも知れません。サッカーでボールのあるところに選手が全員集まって入り乱れ、そこに観客の耳目も集まる。しかし本当の犯罪は、ボールの無い隅っこで行われていたのかもしれません。

これほどの知能犯はなかなか出てこないでしょうが、今後同様のことが起こった場合はこの事件を教訓としなければいけません。人の注目が集まらない所での変化など、あらゆる可能性を考え調べることが必要なのではないかと思わされた事件でした。

事件の本質は、前述した数々の書籍にお任せいたしまして、私は編集の現場でのお話をさせていただきます。