日本の未来を背負うアフリカ系MF
藤田譲瑠チマ(横浜F・マリノス)
今のJリーグでもっとも面白いセントラルMFのひとりだ。
日韓W杯が開催された2002年にナイジェリア人の父と日本人の母の下、東京都町田市に生まれ、少年時代から天性のボールスキルを備えていたという。技術を尊ぶ東京ヴェルディの下部組織で才能を磨き、2019年に17歳でJ2を戦うトップチームにデビュー。次の2020年シーズンには主力となり、翌2021年シーズンは徳島ヴォルティスへ移籍して初のJ1で28試合に出場し、1得点と1アシストを記録した。すると、昨季終了後に横浜F・マリノスに引き抜かれ、今季はその名門で激しい定位置争いに挑んでいる。
まだ完全にレギュラーとは言えないものの、ピッチに立てば、往々にして輝きを放つ。常に良い姿勢で視野を確保し、シンプルかつ的確なタッチで攻撃を組み立て、スペースがあれば自ら持ち運んで敵陣を襲う。ボールを受ける際には独特の間でマーカーをいなし、ダイレクトで大きく展開するのも得意だ。
2019年にブラジルで開催されたU-17W杯では、日本の全4試合に先発しており、世界大会は経験済み。以降も世代別代表の常連で、今年6月に行われたU-23アジアカップでは主将を任された(日本は3位)。すると翌7月のE-1選手権では、(国内の選手だけで構成された)A代表に初招集され、香港戦と韓国戦に出場。どちらの試合でもアシストを記録し、日本の2度目の優勝に貢献した。
「初めてのA代表だったので、すべてにがむしゃらに取り組みました」と韓国戦後に藤田譲瑠チマは語った。オンライン上で多くの取材者が注目するなか、20歳のタレントはじっと画面を見つめ、ハスキーボイスで言葉を発したが、その大半は自身の課題についてだった。
「(カタールW杯に)行けたらいいですけど、簡単な壁ではないと思います。この大会でよかったからといって、すんなり最終メンバーに入れるものではないはずです。自分はまだ遠藤航選手などと比べると、ボールを奪い切る力が足りない。それと前を向いて縦パスをつけることが自分の課題です」
現世界王者フランスのワールドクラスの守備的MF、エンゴロ・カンテを目標のひとりにしているという。個人的にはより攻撃的な資質が高いと感じるが、本人はあくまで守備にも強くなり、中盤に君臨する未来像を描いているのだろう。
現在の日本代表の中盤は多士済々だ。それでもこの気鋭の若者を帯同させれば、将来的にも日本サッカーの大きな財産になり得るはずだ。