10年後のオリンピック種目採用を目指して

1年を通して日本各地でも大会が行われているライフセービング競技。種目が多くルールも複雑だが、その分、他の競技にはないおもしろさがある。

「単純に泳力を競って1分1秒を争う種目もありますが、オーシャン種目では特に、自然と調和できるかどうかが重要になってきます。波をつかんで乗ることができたらより前に行けるし、つかまえられなかったら遅れてしまう。同じ波に乗ったとしても、途中で崩れてしまう場所と崩れない場所ができることもありますしね」(上野)

「だからこそ、観戦するときも最後の最後までおもしろいんです。フィジカルの強さだけでなく、ポジション取りなどのテクニックや経験値、運の要素もありますから」(繁田)

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レースをする環境が一律ではないからこそ、オーシャン種目ではタイムを競わないのがルール。競泳では持ちタイムが1秒違っただけでなかなか相手に勝つことはできないが、ライフセービングでは大逆転も起こりうるのだ。

「プール種目の場合もすごく細かいルールが設定されているので、いかに技術や精度を上げていけるか。その追求には終わりがないんです」(西山)

満面の笑みでそう語る彼らの表情を見ていると、競技を心から愛していることが伝わってくる。目下の課題は、ライフセービング競技の魅力を広く伝えること。トップアスリートである彼らの役割はもちろん、世界に通用する選手になることだ。

「2032年にオーストラリアのブリスベンで行われるオリンピックでは、ライフセービング種目の採用を目指しているそうです。もちろん、僕は出場する気でいます! そのときには44歳ですけど(笑)」(西山)

「プレイヤーとしてだけでなく、コーチやチームマネージャーなど、オリンピックに携わる道は他にもありますからね。これまでは、オリンピック競技じゃないからという理由でスポンサーがつかないこともありました。出場することができたら、ライフセービングの可能性が広がるはず。期待しています」(上野)

そのためにもまずは、「ライフセービング世界選手権大会(LWC 2022)」で5位以内を目指すという日本代表チーム。身体ひとつで世界の海に挑む、彼らの勇姿を見守りたい。


取材・文/松山梢 撮影/nae.

日本ライフセービング協会の公式サイトはこちら
https://ls.jla-lifesaving.or.jp

後編 「死に直面する可能性がある仕事は、もちろん怖い」水難事故0に挑み続ける、ライフセーバーたちの覚悟 はこちら