レベル差を考慮した「2次予選形式」の導入を

では、今後の高校野球はどういう手立てを打つべきなのだろうか。

まず一つ目は、先に書いてきたように、高校野球は部活動でありながらチームを強化する段階において、各校に大きな隔たりがあるのを理解するということだ。

「平等」を謳ったところで解決策はない。それほどチーム強化に「違い」がある。

それを理解した上で、各府県の出場校を過去の成績から実力レベルにランク分けし、その上で、実力最上位のチームと下位に位置する高校は対戦することがないよう大会のシステムを変更する必要がある。

ここでお勧めしたいのが、夏の大会を「2次予選形式」にするという案だ。

簡単に説明すると、1次予選は5月くらいから開催。2次予選は通常の7月初旬から下旬にかけて行うというものだ。5月の1次予選にはランク別の最下位グループから3カテゴリーくらいが出場。勝ち上がったチームのみ2次予選に進む。一方、2次予選は1次予選を突破したチームと残りの上位カテゴリーチームが出場し、甲子園の切符を賭けて戦う。

この方式の利点は2つある。

一つはレベルの最上位と下位チームの対戦を避けることで、怪我や事故のリスクを防ぐこと。もう一つは、全高校球児に大会出場のチャンスを担保しつつ、大会を早期に開催することで、受験勉強や就職への切り替えを通常より早く促すことができる点だ。

周知のように、同じ高校スポーツの全国大会「インターハイ」は7月下旬から8月にかけて開催される。甲子園とほぼ同じような時期だが、その予選は5〜6月の時期に開催されている。高校野球より早いのだ。

サッカーやバスケットボールのように、冬にも全国大会が開催される競技はあるものの、他の競技者は高校球児より早く受験勉強に切り替えている。早く受験に備えたいと言っても、これまで続けてきた野球を途中で諦めてしまうのではスッキリしない。どの高校球児も高校3年間をやりきって野球に区切りをつけたいと思っている。だから、大会は残しつつ2次方式に分けて先行開催することで、球児たちの想いに応えるというものである。

そして、2次予選である本予選は通常通りの開催だが、すでに1次予選で数校が敗退しているため、いつもと同じ期間でやっていたとしても、日程は緩やかにできるはずだ。1次予選も2次予選も実力相応の拮抗した大会になり、日程も窮屈にならない。

82−0の大量得点差の試合があったことは、異常なこととして受け止めなければならない。「同じ高校生だ」と言っても、取り組んでいるレベルには大きな隔たりがある。この事実を受け入れ、死者や事故を起こさないためにも、新たな改革が必要だ。

高校野球のランク分けを行い、安心・安全な大会の開催を望む。

文/氏原英明