「木村とは付き合うな」とサッカー協会から言われた

木村 代表監督になってからは、やっぱりちょっと遠い存在になってしまって、あまり僕も取材していないんです。

大野 協会のガードもかなり固かったですからね。僕はオシムさんとハリルホジッチさんという2人の日本代表監督のマネジメントをやりましたけれど、どんな取材や出演であっても、最終的には協会がオーケーしたものでないと受けられない。かなり管理が厳しかったです。

木村 本来はもっと発信すべき自由を与えるべきだと思うんですけど、そこをコントロールしたがるんですよね。これはアシマさんから聞いたんですけれど、「協会から、『木村と付き合っちゃダメだ』って言われているのよ」って(笑)。

あの頃は、ドイツW杯惨敗の批判をかわすためか、当時の川淵会長がシーズン途中でオシムさん本人に一言の打診もないままに、「(次の代表監督は)オシムって言っちゃったね」と会見で失言し、既成事実化。結果的にジェフから監督を強奪した。そのやり方を、僕が批判していたからでしょう。

大野 日本はクラブにおいても、選手や監督の発言をコントロールしたがる傾向にはあります。SNSが普及して選手の発言機会の自由度は増していますが、一方でコロナ禍もあって、本音を聞き出す対面の取材の機会は少なくなっているように思います。

木村 考えてみると、大野さんのオシムさんに対するマネジメントは、倒れた後の方が、圧倒的に長いですね。

大野 そうです。代表監督は、結局、1年とちょっとくらいでした。2007年11月に地元オーストリアで開催された3大陸トーナメントでは、オシムさんらしいサッカーができてきたところでした。代表で、本当にやりたいことがやっと浸透してきた、その直後に倒れてしまいましたね。スイス戦(2007年9月11日)とか、本当に素晴らしかったですね。

木村 素晴らしかったですね。前半に2失点していたのを、後半に逆転して4対3で勝った。あのまま、元気なままで日本代表を引っ張ってもらえていたらと思います。そして倒れた後、日本サッカー協会はもう少し解任の判断をするのを待てなかったのかなというのが残念ですね。