年金は20〜30%ほど少なくなるのが既定路線
では、年金が簡単に破綻しないことを理解できたなら、「実際に僕たちは年金をどれくらい受け取れるのか?」を考えてみましょう。
年金財政は賃金や労働参加率などといった様々な要素に影響を受けるため、「受給額がいくらになる!」といい切ることができないのですが、ざっくり今の水準から20〜30%ほど少なくなると思っておくといいのではないかと思います。
これは厚生労働省が行った2019(令和元)年財政検証レポートに記載されていますが、その前に年金財政維持のために導入されているマクロ経済スライドというものを理解しておく必要があります。マクロ経済スライドとは、簡単にいうと年金財政維持のための調整機能だと思ってください。
年金制度はこれまで財政維持のために保険料を払ってくれている人たちの保険料を上げることで財政維持をしようとしてきました。しかし、それだと現役世代の負担が大きくなりすぎてしまうため、保険料を増やすのではなく、年金給付を減らすことで対応することに決めました。つまり、収入を増やすのではなく支出を減らすという判断ですね。
では、どれくらい減ってしまうのかというと、それを考えるのに役立つのが財政検証レポートです。
この資料では、経済前提がケース1〜ケース6まで用意されています。簡単にいうとケース1が最もいいケース、ケース6が最も悪いケースです。
ケース1だと実質経済成長率が0.9%で実質賃金が1.6%も増えていくバラ色の未来です。実質経済成長率は、1991年〜2021年の30年間の平均は0.7%ですので、控えめな数字かもしれませんが、実質賃金が1.6%も増えるのはかなり無理があると思います。仮にそれが実現できたとして、年金はどれくらい受け取れるのかというと、その右側にある所得代替率が参考になります。