牛乳は、命の一滴

――小泉牧場では、小学校の体験学習を受け入れているそうですね。

平成15年から、酪農教育認定ファームとして、小学生が総合学習でやって来るようになりました。最初のうちは依頼があるだけ受け入れていたんですけど、やるからにはひとりひとりにしっかり伝えたい! と、地元の学校に絞って続けて来ました。

「続けるために縮小」都内最後の酪農牧場。3代目牧場主の決断_3
赤ちゃん牛と触れ合うことで、お母さんだからお乳が出る、という当たり前のことに改めて気づく

――子どもたちに伝えたいことは?

今の子どもたちは、パックに入ってスーパーに並んでいる牛乳しか知らないじゃないですか。牛舎に入ったら「くさい」って鼻をつまむ子もいる。でも、母牛と仔牛を見せて「赤ちゃんに飲ませるためのお乳を、分けてもらっているんだよ。だから牛乳は命の一滴なんだ」って言うと、子どもたちの顔つきが変わるんですね。

――命の授業…。

いやいや、そんなカッコいいもんじゃないです。僕がしゃべりまくる「3代目の単独ライブ」って言われてます(笑)。全身全霊でシャウトしてますから! 僕はね、子どもたちに「この体験を忘れないで」とは言わないんです。忘れていい。でも、自分たちが大人になって、もしかして親になったとき、ふと思い出してくれたら嬉しいなと。

――現在は、体験学習の受け入れは休止中とのことですが。

もちろんコロナ禍もあるんですが、4年ほど前、仕事中に右膝の靱帯を切っちゃったんです。だましだまし仕事を続けていたら坐骨神経痛が悪化して、ちょうど最初の緊急事態宣言のころに椎間板ヘルニア狭窄症で手術することになってしまったんです。2週間入院して、その後は自宅でリハビリ。復帰するまで半年くらいかかりました。

「続けるために縮小」都内最後の酪農牧場。3代目牧場主の決断_4
インタビューに答える時も、勝さんは全身全霊!

――その間、牛さんたちの世話は?

酪農ヘルパーさんの助けを借りました。以前の酪農家は365日休み無しが当たり前だったし、僕も長男が幼稚園にあがるくらいまでは休みを取ったことがなかったんです。でもある時ヘルパーさんを頼んで子どもと遊びに行ったら「パパ、お休みしてくれてありがとう」って言うんですよ。泣いちゃいましたよね。それからは月に数回来てもらうようになっていたので、長期も安心して頼めました。

――そんなに長く仕事をお休みしたのは初めてのこと?

だから、入院中はたくさん本を読んだし、朝はずっとテレビを見てめざましジャンケンとかリモコン片手にやるのが、もう楽しくて(笑)。退院後はNetflixで韓国ドラマ三昧。最初は心配してた妻も、だんだんうんざりしてましたね(笑)。

――そんな中、小泉さんは大きな決断をされたんですよね?

はい。大好きな酪農だけど、続けていくのは難しいんじゃないかと思い始めたんです。