新人と凄腕イケメンボディガードの
バディもの、開幕!
「SP」と言えば、警視庁に所属する要人警護のための私服警官だ。民間警備会社にも要人などの身辺警護を行う、一般的にはボディガードと呼ばれる業務がある。その業務の名は、「第四号警備」。
少年の自分が木箱の中に閉じ込められ、砂漠の砂が吹き込む隙間から、人の首が飛ぶ瞬間を目撃する――。東京・清澄白河で一人暮らしをする久遠航太が見た悪夢の描写から、物語は幕を開ける。次いで、火事の現場に遭遇し、住人を助けるため煙に満ちた屋内へ飛び込んでいく様子が。朦朧とした意識の中で巻き起こる、少年時代のフラッシュバック。航太は中学の頃に父の事故死に立ち会った衝撃から、その前後二年の記憶が欠落していた。過去に何が起きたのか? サスペンスの気配が濃厚に漂うオープニングだ。
航太は警察官になる夢を抱いていたが不合格続きで、民間警備会社でガードマンとして働いていた。今の環境は望んだものではないけれども、ここで自分にできることは何かと考える真面目さが読み手に伝わってきたところで、航太が別の民間警備会社「United4」にスカウトされる。そこにいたのは、かつて自分を火事の現場から救った超絶イケメン・獅子原烈だった。航太が獅子原と師弟関係を結び、新たに就いた業務が「第四号警備」だ。
実のところ、本書は壮大なシリーズの幕開けを告げるプロローグだ。曲者揃いの「United4」のメンバーの顔見せや、ストーカーに悩む女性のボディガードといった各種業務の一端が明かされ、続く展開への期待が膨らんでいく。壮大な物語のプロローグにおいて、最も重視すべきポイントはどこだったか? 偶然とは言え「第四号警備」の仕事に就いた航太が、己の仕事に対する矜持を発露する瞬間だ。終盤に登場する危険な案件で、自分の命ではなく、警護対象者の命を護るために発するセリフは、問答無用でグッとくる。
そして、自分を護ろうとしてくれる仲間を得た主人公のこれからを、ずっと追いかけてみたくなる。