成虫になり数時間しか生きられない昆虫も

撮影メンバーは当初15人くらいで始まったが、すぐ人手が足りないことに気づき、最終的に4、50人くらいまでに膨れあがったという。メンバーを集めるときに気を配ったのが、「写真撮影が趣味な人」ではなく、「とにかく虫が好きな人」だという。この図鑑の副監修者で、写真関係の担当をした伊丹市昆虫館の学芸員・長島聖大(せいだい)さんが説明する。

「撮影する前に、まず昆虫を捕まえないといけません。だから『ウスバカゲロウ採りの名人』みたいな人にお願いするんです。ネジレバネなんて、採れる人は日本に数人しかいませんから」

ネジレバネは幼虫時代にスズメバチのお腹に寄生し、羽化すると、数時間だけ飛び回って死んでしまうのだという。

「だからネジレバネを採るためには、まず大量にスズメバチを捕獲するところから始まります。また井戸水の中にだけ棲んでいるゲンゴロウを採るために、井戸をもっている民家の方のご協力を得て、井戸水をひたすらくみ出して探しました」(長島さん)

2800種の昆虫を生きたまま撮り下ろし! 「昆虫図鑑」製作者の執念_2
できたばかりの図鑑を手に、楽しそうに話をする牧野さん(右)と長島さん(撮影:菊地健志)

SNSで呼びかけ

そうやってもまだ見つからない昆虫がいる。どうするか。長島さんが「奥の手」を明かしてくれた。

「SNSを活用しました。特にTwitterには、虫を見つけるのがうまい人がたくさんいます。目的の虫を捕まえられそうな人にお願いしました。快く協力してくださる方が多くて、とても助かりました」

関わった人たちの溢れ出る昆虫愛に頭がクラクラする。

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監修者の丸山さんも昆虫の採集と撮影に参加した(ご本人からの写真提供)