苦手だと思うことも、やってみたら発見がある
2年ほどアルバイトした後、セキさんがテキスタイルを学ぶためのスウェーデンへの留学やスタッフの退職が重なり、29歳の時に正社員として採用。退職する2020年まで、アルバイト時代を含めた13年間、サルビアで経験したことは今でも鳥羽さんの糧になり、「RELIEFWEAR」に活かされています。「RELIEFWEAR」が運営するWEBメディア『養生通信』も、サルビアで学んだ伝えることの面白さ、発信することや共鳴することの楽しさがきっかけになっています。サルビアでの活動で、自分の意外な一面を知った出来事もありました。
「事務所兼アトリエが蔵前に移って、月いちショップという名で、月1回マーケットを開催することになりました。私は接客するのが苦手だと思っていたので、不安だな、ちょっと嫌だなと思いながら、取り組み始めたんです(笑)。でもやってみるとすごく楽しくて。作家さんを招いたり、フードやドリンクを作ってくださる方を招いたり。出店者やお客さんと交流して、常連さんも増えてきて、楽しみがどんどん増えていきました」
「苦手だと思うことも、やってみたら発見がある」という考え方は、ここから学びました。幼稚園2回、小学校3回、中学校2回の転校を重ねたことで、「置かれた環境に馴染む力」「どんな場所でも心地いいことを探す力」が自然と備わったのかもしれないという鳥羽さん。さらには予定調和でない“直感力”、自分がいいと思える“ひらめき”を研ぎ澄ましたことで、人生を切り拓いてきました。
日々の養生の積み重ねが健やかさを作る
「RELIEFWEAR」は鳥羽さんの夫とふたり、二人三脚で進めています。夫は、平日は会社員でリモートワークしつつ、週末にRELIEFWEARのブランディングやビジュアルコミュニケーションを手伝っているそう。直感的でアイデア力はあるものの計画や整理が苦手な鳥羽さんに対して、「夫は対照的なタイプ。道筋立てたり、整理して考えたり、俯瞰して考えるのが得意な人。たまにぶつかることもありますが(笑)、仕事や生活をする上では補い合える良いバランスです」。
鳥羽さんが大切にしていること。それは日々無理をせずに、溜め込まずに過ごすこと。ものづくりにはこだわるものの、生活の中では手放すことも恐れません。
「無理をしない、完璧を求めすぎない。家事もほどほどに、最近は料理も夫がすることがほとんど。負担を感じながら私がやるより、料理が好きで得意な夫に委ねた方が、うまく回ることが多いと気づきました。40代になった今は、自分に多くを求めすぎないことも大切だと思っています。不調になって色々調べていた頃、『バランスの取れた食事』、『しっかり睡眠を取る』、『適度な運動』、『ストレスを溜めない』ことくらいしか解決法が出てこなかったんです。結局、そういった日々の養生の積み重ねが健やかさを作るものだと思い、大事にするようになりました」